ブロックチェーンのビジネス活用、そのカギは「仮想と現実の架け橋」にある:ブロックチェーンの可能性と未来を語る(4/4 ページ)
ビジネスパーソンの知識不足やエンジニアの不足といった要因もあり、日本では普及が遅いブロックチェーン。では、そういった要因が解決したとして、今後はどのようにブロックチェーンは進化していくのだろうか。
そして、最後のカギは、ブロックチェーンと現実の情報を結び付ける「オラクル(神託=神の言葉)」だ。ブロックチェーン上に入力された(確定した)情報は改ざんできないが、入力するデータの真偽が確かめられない場合、システム全体の信頼性が揺らいでしまう。
例えば、死亡保険の契約をブロックチェーンで扱う場合、「死亡」という事実をどのように、誰がブロックチェーンに乗せるのか。パブリックなネットワークであれば、他者が勝手にウソの情報を入力することも可能だ。
保険が扱う情報は秘匿性が高いため、法規制やデータの出自を管理することで対応できるかもしれないが、ブロックチェーンの適用範囲を広げる際に“カベ”になるのは間違いない。「今後、ブロックチェーンを実用化するに当たって、大きな課題になるだろう」と榎本さんは指摘する。
投票で決める、情報をアップデートする機関(中央機関)を作るなど、さまざまな方法が議論されているものの、スタンダードな方法はまだ確立されていない。ブロックチェーンに現実世界の情報をどう入れていくのか。これもまた、ステーブルコインと同様に「仮想(ブロックチェーンの世界)と現実をどう結び付けるか」という点がテーマになる。
「ブロックチェーンのビジネス活用は、グローバルで見ても各社が模索している段階で、1カ月先には状況がガラリと変わってしまうほど、変化が激しい領域です。自分自身、そこがとても面白いと感じていますし、今始めないと、そして100%コミットしないと間に合わないという強い思いの下でLayerXは設立されました。本当にチャレンジングな領域なので、ビジネスのプレイヤーにしてもエンジニアにしても、面白いと思った人はどんどん参加してほしいですね」(榎本さん)
関連記事
- ブロックチェーンは決して“万能”ではない──ビジネス活用に必要な理解とその本質
日本では、ビットコインによって有名になった「ブロックチェーン」。仮想通貨投機の熱が収まってきた今、ビジネスでの実装が注目されつつある。とはいえ、海外に比べればその動きが鈍いのは事実。その理由はどこにあるのだろうか? - コレ4枚で分かる「ブロックチェーン」
世界的に広がりを見せているブロックチェーンテクノロジーについて、その背景とともに、特徴や用途を4枚の図で解説します。 - 全国の不動産情報をブロックチェーンで共有へ――前代未聞のプロジェクトが動き出した理由
日本の不動産業界に変革を起こそうとしている6社がある。これまで各企業が蓄積してきた「物件の間取り」「入居状態」「築年数」といった情報をブロックチェーンで共有し、リアルタイムで正確に更新しようというのだ。参加企業は、一体なぜこんな挑戦に打って出たのか? - ブロックチェーン活用で、外航貨物保険の支払い手続きが1カ月超から1週間に――東京海上日動とNTTデータが実証
東京海上日動火災保険とNTTデータは、外航貨物海上保険の保険金請求手続きへのブロックチェーン技術の適用を検証。保険証券や事故報告書、貨物の損傷写真といった必要なドキュメントをブロックチェーン上で共有することで、保険金の支払いプロセスを迅速化する。 - 宅配BOXにブロックチェーン パルコらが共同実証実験
パルコなどが、「カエルパルコ」の商品を受け取る実証実験を実施。ブロックチェーン上に荷物の納入記録と施錠要求を記録することで、安心・安全な取引を実現するのが狙いだ。 - ブロックチェーンは役立たず? それとも世界を変える?
ブロックチェーンには、さまざまな期待が寄せられる一方、一部にはその効果を疑問視する声も挙がっています。果たしてその有用性は? ブロックチェーンを巡る最近の動向を交えて考察します。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.