3年でユーザーが10倍に 三菱重工航空エンジンがTableau導入に成功した理由:7割以上の部門で活用(2/2 ページ)
航空旅客数が今後20年で倍増するという予測もある中、世界的に航空機の供給が追い付いていない。この状況に対し、三菱重工航空エンジンはIoTやデータ分析で生産性を高めようとしており、Tableauの導入に踏み切った。年を追うごとに利用者数が増えており、着実な成果が出ているという。
Tableau導入成功の極意は「スペシャリストの育成」
Tableauの利用拡大については、IT部門がユーザーへ積極的に売り込むことはなく、むしろユーザー側から利用を希望するパターンが多かったそうだ。
「ある社員が、Tableauを使える同僚にデータ解析を依頼したところ、翌日に結果が戻ってきて驚いていました。効果を目の当たりにし、自部門でも導入を検討するという形が多かったですね」(吉野氏)
また、ヘビーユーザーに対して、Webトレーニングや個別相談会「Tableau Doctor」への参加など、積極的に学習の機会を与えたのも、利用拡大への原動力となった。ヘビーユーザーたちは自らのニーズや同僚の依頼でテンプレートを作り続けており、現在は1500を超えるテンプレートが出来上がったという。
「“自他ともに認める”Tableauのスペシャリストが数人生まれています。私たちは分析を行わず、ユーザーが必要なデータの準備に注力する立場なので、現場に近い分析のニーズについては、彼らに相談するように勧めています。Tableauの使い方についても、彼らを軸にユーザー同士で情報交換を行っていると聞いています」(吉野氏)
今後は、基幹システムや工場からのデータを分析し、フィードバックできるようなシステムインフラを目指し、機械学習の活用も本格的に進めていくという。あらゆる変化に追従できる「魅せる工場」――これこそが彼らが求めるスマートファクトリーの姿だ。
製造業は現場の力が強く、変革が進みにくいともいわれるが、同社は三菱重工から分社化したことで意思決定のスピード感が上がったという。また、吉野氏が所属するIT戦略グループは、運用管理よりも企画に重きを置いた部門で、ユーザー部門から異動したメンバーが大半を占めている。彼らが現場のニーズを理解しているのも、IT活用が進む要因になっているようだ。
「われわれはユーザーとITの中間にいるポジションだと考えています。メンバーの数も部門が設立した当初からは倍以上に増えました。ユーザーをうまく巻き込み、『彼らの改善活動を手伝っている』という意識で相談に乗ったり、プロジェクトを進めたりしています」(吉野氏)
関連記事
- SUBARUの航空機生産を支える1人の男と「QlikView」
自動車メーカー「SUBARU」に航空宇宙事業という“別の顔”があるのをご存じだろうか。1万点以上にものぼる部品を管理しながら、設計とテストを繰り返す。航空機開発の複雑な業務フローに混乱していた現場を救うため、1人の男が立ち上がった。 - 1人の“ゲーム女子”が「Tableau」でデータ分析チームを作るまで
買い切り型から運用型へとビジネスモデルがシフトしつつあるゲーム業界。業界大手のカプコンも既存ブランドのオンラインタイトルをリリースしている。収益のカギを握るユーザー動向の分析に立ち上がったのは、1人の“ゲーム女子”だった。 - 創業65年、AIで生まれ変わる箱根の老舗ホテル その成功の要因は?
AIや機械学習で成功を収める企業が増えてきている一方で、思ったような効果が得られていない企業も少なくない。ビジネスにAIを活用するコツはどこにあるのか。箱根湯本の老舗ホテル「ホテルおかだ」の原氏が、そのポイントをセミナーで解説した。 - 脱Excelで生産性15倍、リクルートが「Tableau」を選んだ理由
データ分析に「セルフサービスBI」を検討している企業は多いが、業務部門主導でデータ分析を行う文化を作るのは簡単なことではない。そこで「Tableau」でさまざまな成果を上げているリクルートライフスタイルに、導入のポイントやツールの活用方法を聞いてみた。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.