17歳の起業家はなぜ、レシート買い取りに注目したのか――ワンファイナンシャル創業者・CEO 山内奏人氏(前編):長谷川秀樹のIT酒場放浪記(4/4 ページ)
メルカリのCIOを務める長谷川秀樹氏が、志高きゲームチェンジャーと酒を酌み交わしながら語り合う本対談。第2シーズン初回のゲストは、まだ飲めない17歳の起業家、レシート買い取りアプリ「ONE」(ワン)の公開で一躍有名になったワンファイナンシャルCEOの山内奏人さんです。
日本のベンチャーは「資本の戦い」になっているのが寂しい
長谷川: 山内さんは他のベンチャーのこともいろいろ耳に入ってくると思うんですけど、日本のベンチャー業界について何か思うことがありますか?
山内: 比較的、資本の戦いみたいになっちゃっていると思います。レシートを初日に25万枚買い取った僕が言うのもどうかと思いますが、「インパクトをどう出すか」みたいな、あるいは「予算をしっかりとっておいて、それをどれだけばらまいてユーザーを増やすか」みたいな、割とシンプルなゲームになりつつあるのがちょっと寂しいな、と思うんです。初期のインターネットらしさみたいなものが、いろんな意味でなくなってきているのかな、と思うんです。
長谷川: 単純に資本のパワーゲームに寄っちゃってるんじゃないかな、みたいな。
山内: プロダクトが良ければ伸びる、みたいな世界じゃなくなってしまっているのが、ちょっと寂しいところですね。
長谷川: 大企業の人と話すこともありますか?
山内: 時々あります。クライアントは大企業の方が多いので。
長谷川: ベンチャーの人たちと大企業の人たちと、それぞれ付き合っていてどういうところが違うと感じますか?
山内: どうしても、意思決定のスピードは違いますね。でも、本質的なところでは、あまり大きな違いはないかもしれないです。
長谷川: そうですか?
山内: スタートアップやベンチャー周りの人たちって、組織が小さいんですよ。だから、自分一人で決められる決裁権を持ってる人が多いですよね。一人で決められるから、割と感覚で意思決定している部分があるような気がします。でも、大企業の方々はしっかりステップを踏んで、みんなが納得するような形で意思決定をしていく。この意思決定のスタンスの違いというのはあるかなと。
長谷川: みんなで意思決定すると、どんどん丸くなってとがった意見が通らない――という通説もありますけど。山内さんからすると、それはそれで良いも悪いもない、みたいな感じ?
山内: はい。どっちも良い点もあれば悪い点もあると思っています。例えばスタートアップだと、一人の責任者が間違った判断をしてしまったら、その時点でもうアウトで、致命的なエラーになりやすい。でも、大企業ではとがった意見にはなりにくいけど、めちゃくちゃ失敗することもなくなってくる。ある意味でリスクヘッジできている部分はあると思うんですよ。
長谷川: だとすると、大企業が新規ビジネスをやるというのは、やっぱり相反するのでうまくいかないですかね。
山内: そうですね、それは必ずあると思います。一人が全部決められるという状況を、別の箱を作るなり何なりして作らないと、新規ビジネスはなかなか立ち上がらないのかなと思います。
長谷川: 山内さん、話す内容が完全に大人ですね。歳、いくつでしたっけ?
山内: 今17歳です。
長谷川: 全然そんな気がしませんね(笑)
(後編に続く)
ワンファイナンシャル CEO 山内奏人氏プロフィール
2001年に東京で生まれる。6歳の時に父親からPCをもらい、10歳から独学でプログラミングを始める。2012年には「中高生国際Rubyプログラミングコンテスト」の15歳以下の部で最優秀賞を受賞。2016年にはウォルト(現ワンファイナンシャル)を創業。
メルカリ CIO 長谷川秀樹氏プロフィール
1994年、アクセンチュアに入社後、国内外の小売業の業務改革、コスト削減、マーケティング支援などに従事。2008年、東急ハンズに入社後、情報システム部門、物流部門、通販事業の責任者として改革を実施。デジタルマーケティング領域では、Twitter、Facebook、コレカモネットなどソーシャルメディアを推進。その後、オムニチャネル推進の責任者となり、東急ハンズアプリでは、次世代のお買い物体験への変革を推進している。2011年、同社、執行役員に昇進。2013年、ハンズラボを立ち上げ、代表取締役社長に就任。東急ハンズの執行役員と兼任。AWSの企業向けユーザー会(E-JAWS)のコミッティーメンバーでもある。2018年10月から現職。
関連記事
- 連載:「長谷川秀樹のIT酒場放浪記」記事一覧
- 豚舎のリアルタイム監視にBI活用――協同ファーム、豚舎管理にクラウド型BIツールを導入
給水量や餌の供給量、温度・湿度・CO2といった豚舎を管理するIoTデータを収集、活用する基盤を構築した。 - 共創よるビジネス創出を支援――IoT/5G時代のビジネス開発拠点「KDDI DIGITAL GATE」が2018年夏オープン
KDDIは、IoT/5G時代のビジネス開発拠点として、2018年夏に「KDDI DIGITAL GATE」を開設する。共創による新たなビジネスソリューションの創出を目指し、デザイン思考型のワークショップやアジャイル開発による高速プロトタイピング、パートナー企業との共創の仕組みなどを提供する。 - ソラコムとKDDI、IoT向けに安価な新サービス「KDDI IoTコネクト Air」を提供
ソラコムとKDDIが、12月以降にIoT向けの安価なSIMサービスを提供する。Webベースで手軽に管理ができる「SORACOM Air」とほぼ同等のサービスをauのネットワークで利用可能になる。 - KDDI、法人向けのIoTクラウドサービスと回線サービスの提供を開始
KDDIが、11月に発表したIoT向けサービス「KDDI IoTクラウド Creator」および「KDDI IoTコネクト Air」の提供を開始した。 - SORACOM Airで送ったIoTデバイスのデータを蓄積・グラフ化する「SORACOM Harvest」
ソラコムが、サーバやストレージを用意しなくても手軽にIoTデバイスから送られてくるデータを蓄積できる新サービス「SORACOM Harvest」を発表。 - 武闘派CIOが見どころをチェック 情シスのみんな、「Google Cloud Next '18」に行く準備はできてるかー!
2018年7月24日から26日までサンフランシスコで開催されたGoogle Cloud Next '18。今回のイベントには、情報システム部門が注目すべきソリューションが幾つも登場しています。見どころを武闘派CIOが解説!
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.