これをやったら「働き方改革」はうまくいかない サイボウズチームワーク総研、青野氏に聞く「成功に欠かせないポイント」:INSIGHTS SHARE(1/3 ページ)
個人が「働き方を選ぶ」とは、どういうことなのか。現在「100人100通り」の働き方を掲げているサイボウズの青野誠氏と、ライフスタイルやイベントに合わせて働き方を決められる「orangeワークスタイル制度」を導入したブイキューブの今村亮氏に、そのヒントを聞いた。
この記事は、「INSIGHTS SHARE」に掲載された記事を編集して掲載しています。
「働き方改革」――。あなたの会社は、この言葉に踊らされていないだろうか。「さまざまな施策を行ったものの、うまくいかない」と嘆く企業の多くが、本来は「手段」である改革を「目的化」してしまうことで、働き方改革に失敗している。
改革を成功させた企業は、どのようなプロセスで改革を進めたのか。改革を続けていくために欠かせない要素とは何なのか――。ブイキューブ管理本部 人事グループのグループマネージャーを務める今村亮氏がサイボウズ人事部副部長 兼 チームワーク総研研究員の青野誠氏に聞く。
サイボウズとして「働き方改革」という言い方をしたことは一度もない
青野: サイボウズは多様な人事制度を作ってきた結果、「働き方改革がうまくいったんですね」と言っていただくことが多いのですが、実はサイボウズとして「働き方改革」という言い方をしたことは一度もないんです。
――確かに、「働き方改革」の旗を振ったわけではなく、「離職率の高さに危機感を抱いたことが始まりだった」というお話は青野社長もされていますね。
青野: はい。当時のサイボウズは、一言で言えば“ブラックなITベンチャー”でした。それが当たり前というか、ITベンチャーに入ったからには、こういう働き方をしますよね、と。そういうメンバーが集まっているとはいえ、ライフステージが変化する社員も出てきますから、働けなくなる社員はどんどん辞めていきます。そんな経緯で、2005年の離職率は28%という数字になってしまっていました。
――それを受けて、2006年に最長6年間の育児介護休暇制度、2007年に「働き方を選択できる制度」を導入されたんですね。
青野: はい。まずは、実際に育児休暇を取りたい社員がいたのでその制度を作りました。期間を6年間にしたのは話題作りのためです(笑)。ただ、該当する社員が限られていたこともあって、当時の社員の温度感というのは「そういう人がいたから作ったんでしょ」というものだったと思います。
今村: 限られた社員のために制度を作るという取り組みが、必ずしも全社員には響かなかったということですね。そこから、翌年に制定された「働き方を選択できる制度」には、どうつながったんでしょうか。
青野: 当時は、時短にするか、そうでなければ、めちゃめちゃ長く働くかという実質二択のような状況になってしまっていたんですが、中にはもちろん普通に定時で帰りたいという人もいます。そんな感じで、二択が三択になり……選択肢がどんどん増えていきました。良い悪いではなく、ゲーム機を選ぶように「ワーク重視」「ライフ重視」を選んでほしいという意味で、「DS」「PS」と呼んだりもしていました。
どれだけ細かく区切ってみても、人によって働き方への要望に違いはある
――そこから、さらに現在は「100人100通り」の働き方を提言しています。100通りというのはあくまでも例えであって、「無制限に、社員の数だけ働き方がある」という意味ですよね。
青野: そうです。100通りの前は、「9通りの働き方」を提唱していたんですが、二択が三択になっていったのと同じ流れで、どれだけ細かく区切ってみても、やはり人によって要望に違いはあります。もっと言えば、同じ人でも曜日によってグラデーションが出てきます。
そこで現在は、「曜日ごとの働き方を宣言しましょう」というルールになっています。つまり、あなたは月曜日に働きますか? というところから始まるんです。週4とか週3勤務をデフォルトにするという選択肢を含めて、社員自身に働き方を選んでもらっています。私の場合は(変則的な働き方ではなく)、毎日10〜19時でいいやというタイプですが、各自がこうして宣言し、グループウェアで共有しています。
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