これをやったら「働き方改革」はうまくいかない サイボウズチームワーク総研、青野氏に聞く「成功に欠かせないポイント」:INSIGHTS SHARE(3/3 ページ)
個人が「働き方を選ぶ」とは、どういうことなのか。現在「100人100通り」の働き方を掲げているサイボウズの青野誠氏と、ライフスタイルやイベントに合わせて働き方を決められる「orangeワークスタイル制度」を導入したブイキューブの今村亮氏に、そのヒントを聞いた。
リモートワークの基本は「公明正大」
今村: 一方で難しいのは、「自由であればあるほどいいわけではない」というところです。2017年に制定した「orangeワークスタイル」は、“コアタイムなし、中抜けもあり”の完全フレックスで、かなり自由度が高い分、社員が自発的にマナー的な部分をガイドラインに落とし込むように工夫しています。
青野: リモートワークが進むほど、どこからどこまでが仕事なのかという境界線が曖昧になってきますよね。
今村: そういう難しさがある中で、評価はどのようにされていますか。
青野: 労働時間ではなく、アウトプットで評価するのが大事だと思っています。在宅勤務イコール給与水準が下がる――という会社は多いと思うんですが、果たして本当にそうするのが妥当なのかと。例えば、エンジニアが在宅勤務で生産性を上げたなら、そこは給料も上げましょうという話になります。
極端な話、在宅勤務だと、「電気代やネット代はどうなるんだ」みたいなキリがない話も出てきますが、一番大事なルールは、公明正大ということだと考えています。「小さなうそもやめようぜ」と。監視をしようと思えばいくらでもできるけど、それはされたくないだろうし、会社としてもやりたくないですし。
今村: 性悪説で考えるのって実はすごい大変で、全て監視、監視となるのでコストもかかるんですよね。公明正大は素晴らしいと思うし、これからもリモートワークの基本になっていくと思います。
責任を持って自分の働き方を選ぶからには、皆、自分が一番幸せになり、パフォーマンスが上がる方法を選ぶ
――細かい話も含めると、考えるべきことは山ほどあるように思いますが、制度や文化が企業に定着するまで、だいたいどのくらいの時間がかかるものなのでしょうか。
青野: 「何をもって定着というのか」という議論も必要になりそうですが、もともと必要に迫られて始まった制度が、気付いたら「こっちの方が生産性が上がる」という状態になるのが本来の在り方かもしれません。
弊社の場合、制度や文化ができてくるにつれて、社員の自立度も進んできたんじゃないかと思っています。責任を持って自分の働き方を選ぶからには、皆、自分が一番幸せになってパフォーマンスが上がる方法を選びますから。
今村: ベースがあっての“特例”だと本人からも周りからも不満が出るかもしれませんが、常に自分が選択した結果であれば、不満は出にくいですよね。
青野: そうなんです。文句を言えないんですよ、自分で選んだことなので。
――ブイキューブは、2018年で創立20年の節目を迎え、「EVENな社会の実現」というミッションを新たに制定しました。最後に、両社がそれぞれのミッションやビジョンに込めた思いについて、お聞かせいただけますか。
今村: ブイキューブが提供するのは、「時間と場所を超える」ツールやソリューションです。
逆にいうと、「そこがネックになって機会を失っている」という状況はまだ、少なくありません。例えば、「地方の学生が東京に出ていって就職活動しなきゃいけない」とか、「地方に住んでいるから良い医療を受けられない」とか。
「場所と時間の制約があって機会を失っている」という状況は、Web会議システムなどのソリューションで解決できると考えています。つまりわれわれのソリューションを通して、まずは機会自体を平等にしたいというメッセージです。
青野: サイボウズも、もともとは「情報サービスを通して、世界の豊かな社会生活の実現に貢献する」ということをビジョンに掲げていました。「チームワークあふれる社会を作る」という現在のメッセージになったのは、実は3年ほど前。お客さまから「サイボウズのサービスを使って、仕事の効率が上がってチームワークが向上しました」という言葉を頂いたのがきっかけです。
サイボウズ自身もそうやって変わり続けてきましたが、これもまだ完成ではなくて、2019年も変わっていくと思います。サイボウズ自身が、常に変わることにチャレンジしていきたいですね。
サイボウズ 人事部副部長 兼 チームワーク総研研究員 青野誠氏 プロフィール
2006年、早稲田大学理工学部情報学科卒業後、サイボウズに新卒で入社。営業やマーケティング、新規事業「かんたんSaaS」や「KUNAI」の事業立ち上げなどを経験後に人事部へ。現在は採用、育成、制度づくりなどを担当している。
2016年から、NPO法人フローレンスの人事部門にもジョインし、複業中。自ら多様な働き方を実践している。
ブイキューブ 管理本部 人事グループ グループマネージャー 今村亮氏 プロフィール
1993年、上智大学法学部国際関係法学科卒業後。新卒で大手精密機器メーカーに入社し、入社研修後すぐに人事部に配属される。その後サービス業、メーカー物流会社で、採用、教育、労務、人事制度設計、人事情報システム構築などの全領域とマネジメントを経験し、2016年にブイキューブ入社。現在に至るまで、一貫して人事の道を歩む。
2017年1月から、現任として人事部門を統括。同年発表した「Orangeワークスタイル」制度を構築し、そのノウハウをテレワーク導入に向けた企業向けWebセミナーやコンサルティングなどで発信している。
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