ERPからインテリジェントエンタープライズへ――SAPは企業のデジタル変革をどのように支援しているのか:Weekly Memo(2/2 ページ)
企業の基幹業務であるERPベンダーからデジタル変革を支援するベンダーへと変身しつつあるSAP。その支援のカギとなるデジタルエコシステムの戦略から、デジタル変革支援の最前線を探ってみる。
ERPから「インテリジェントエンタープライズ」へ
今回発表のパートナーサクセスプログラムについては、大我氏が率いるデジタルエコシステム統括本部と、工藤氏が率いるデジタルビジネスサービス事業本部が連携して実施するという。
工藤氏によると、デジタルビジネスサービス事業本部という組織は、これまでメディアなどに出る機会がなかったという。なぜなら、SAPの製品やサービスを採用した顧客に対して、最前線でコンサルティングや導入のサービスサポートを行う部隊だからである。グローバルで約2万5000人(日本では約500人)からなるプロフェッショナル集団が、今まさしく42万社を超える顧客に向けて、ERPからデジタル変革、つまりはインテリジェントエンタープライズへの移行支援に注力しているのだ(図4)。
デジタルビジネスサービス事業本部のミッションは、「私たちは、お客さまがSAPを徹底的に『使い倒し』『インテリジェントエンタープライズに変革すること』を支援いたします」である。品のある言葉遣いかどうかは別として、顧客に寄り添う姿勢が感じられる一文である。
工藤氏はデジタルビジネスサービス事業本部の戦略として、図5に示すように、「トランスフォーメーション&アドバイザリー」「パートナーサクセス」「アダプション&コンサンプション」、そして「イノベーション&イントロダクション」からなる「3+1」を掲げた。
順を追って分かりやすくいうなら、「企画、設計」「開発、構築」「運用、保守、進展」、そして「全てに共通して適用できる取り組み手法」とも見て取れる。ちなみに、最近注目されている「デザインシンキング(以下、デザイン思考)」は、共通して適用できる取り組み手法の1つとなっている。
今回、デジタルビジネスサービス事業本部が前面に出てきたのは、上記の通りパートナーサクセスプログラムを推進するためだが、もう1つ筆者が挙げておきたいのは、工藤氏が2018年10月から陣頭指揮を執る形になったことだ。以前は日本アイ・ビー・エムでデジタル関連事業を担い、デザイン思考などにも精通。筆者もおよそ4年前、同氏への取材で初めてデザイン思考の手ほどきを受けた。
そんな工藤氏は、SAPのデジタル変革支援について客観的にどう見ているのか。SAPジャパン幹部になった今、答えにくい質問を会見の質疑応答でぶつけてみたところ、同氏は次のように答えた。
「SAPがいうデジタル変革とは、すなわちインテリジェントエンタープライズのことで非常に明快だ。デザイン思考もその中のキーとなるイノベーション手法で、SAPの取り組みが発端となって世界に広がっていった。お客さまにとっては、デジタル変革に取り組む上で、SAPのプラットフォームを使っていただければ、全体として素早く良い方向へ進めることができると考えている」(工藤氏)
答えは予想の範囲だが、それをどういう言葉で、どのような表情で語るのかを見てみたかった。プロ集団を率いるプロを引き入れたSAPジャパンのデジタル変革支援は、また一段と強力になったようだ。
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