第7回(最終回)SaaS型ERP導入の取り組み、その未来はどこへ?:SaaS型ERP導入に失敗しないための「5つのポイント」(1/3 ページ)
最終回の今回は、クラウドを活用したSaaS型ERPの将来と各社の取り組みに加え、それらを導入する際の成功のポイントをまとめました。
本連載は、過去6回にわたって、SaaS型ERP導入を成功させるためのポイントについて、「導入アプローチ」「コスト」「人、組織」「システム構成」「業務改革(間接材購買/財務経理)」の側面から解説してきました。最終回である今回は、それらを踏まえて近い将来のSaaS型ERPの姿とその導入に向けた取り組み方について解説します。
クラウドへの投資に対する機運の高まり
KPMGがハーヴィー・ナッシュと共同で実施したITリーダーを対象に実施した世界最大規模の意識調査「HARVEY NASH/KPMG CIO調査」によると、テクノロジー関連の主な取り組みへの投資計画について、9割近くが「クラウドに投資している」と回答しています。もはやクラウドは一定の成熟度に達していて、ITリーダーにとって、セキュリティやレジリエンス(対応力、復旧力)に関する懸念はおおむね払拭(ふっしょく)されていると考えられます。
また、クラウドを利用する上で欠かせない(ブラウザ展開先としての)モバイルへの投資もクラウドと同様のパターンをたどっていて、ITの世界では一般的になっています。一方AI(人工知能)やIoT(Internet of Things)、RPAは、大きな注目を集めているにもかかわらず、大規模、中規模の投資は2割程度にとどまっています。
ERPベンダー各社の動向
ERPベンダーのSaaS化の動向および戦略を見ると、SaaS型ERPへのシフトが進み、その動きと並行してSaaS型ERPを軸にデジタル技術を統合した、いわゆる“次世代型ERP”への移行が進んでいることがうかがえます。ベンダー各社の取り組み状況についてまとめました。
SAP
2015年発表された「SAP S/4HANA」は、ERPとしては23年ぶりに刷新された製品です。その点以上に、オンプレミスよりも先にSaaS(Software as a Service)形式で提供すると発表された点が注目されました。翌2016年には、実際にSaaS版の「SAP S/4HANA Cloud」の提供が日本でも始まりました。
SAPはこの「SAP S/4HANA Cloud」に対して3カ月ごとに機能強化を行っていて、SaaS型ならではの柔軟性とスピード感を発揮しています。
同社は今後、人工知能(AI)やRPAの機能といった技術を「SAP S/4HANA Cloud」に組み込んでいくことを発表しています。
関連記事
- 連載:「SaaS型ERP導入に失敗しないための『5つのポイント』」記事一覧
- 第6回 SaaS型ERPを活用した業務改革のポイント 「財務経理」編
SaaS型ERPを活用した業務改革について、「財務経理」を例に解説します。これからの財務経理部門が取り組むべき改革のテーマを整理しつつ、財務経理部門の業務改革に不可欠なSaaS型ERPの有用性と改革のポイントについて説明します。 - なぜ、MSは「Dynamics 365」でERPとCRMを統合したのか
マイクロソフトがERPとCRMを統合したクラウド型業務アプリケーション「Microsoft Dynamics 365」を提供開始した。両分野を統合した製品が登場したのはこれが初めてだ。同社の狙いはどこにあるのか。 - 海外製ERP 8製品を比較 クラウドにするか否かはビジネスへの効果で見極めよ
ERP導入の成否は企業に重大な影響を及ぼす。その上、クラウドかオンプレミスかの選択もある。現在入手できる主要な海外ERPシステムの概要と、コストメリットだけでは比較できないSaaS型ERPの将来性について考察する。 - なぜ日本企業はSFAやERPをうまく使いこなせないのか
SFAやERPを導入したものの、有効に使いこなせていないとしたら、日本企業ならではの思想や文化の違いが関係しているのかもしれません。 - ERPを狙うサイバー攻撃が激増、壊滅的な被害招く恐れも
SAPやOracleのERPに存在する既知の脆弱性が悪用された件数は、過去3年の間に100%増え、SAP HANAのような貴重な資産が狙われていることが分かった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.