なぜ、MSは「Dynamics 365」でERPとCRMを統合したのか:Weekly Memo(1/2 ページ)
マイクロソフトがERPとCRMを統合したクラウド型業務アプリケーション「Microsoft Dynamics 365」を提供開始した。両分野を統合した製品が登場したのはこれが初めてだ。同社の狙いはどこにあるのか。
「ユーザー目線」に基づいたDynamics 365の特徴とは
「これまでERP(統合基幹業務)とCRM(顧客情報管理)の製品が分かれていたのは、ベンダー目線によるものだ。マイクロソフトは新たにユーザー目線で両分野を統合した製品を提供したい」
米Microsoftクラウド&エンタープライズマーケティング担当の沼本健コーポレートバイスプレジデントは11月30日、日本マイクロソフトが都内ホテルで開いた顧客向けイベントの基調講演でこう切り出した。
マイクロソフトがこのほど提供開始したのは、従来のERP製品「Dynamics AX」とCRM製品「Dynamics CRM Online」を統合した業務アプリケーション「Dynamics 365」。同社のPaaSである「Microsoft Azure」上で提供するSaaS型クラウドサービスである。沼本氏は「マイクロソフトにとって非常に戦略的なマイルストーンになる製品だ」と強調した。
Dynamics 365の中身は、図に示したように7つの機能サービスからなる。沼本氏はDynamics 365の特徴について、「ユーザー目線」に基づいた「Purpose-built」「Productive」「Intelligent」「Adaptable」の4つのキーワードを挙げた。
1つ目のPurpose-builtは、目的に合わせて必要な機能サービスからスタートできることだ。ERPとCRMを統合したアプリケーションの中から、必要な機能を選んで利用できるようにしている。
2つ目のProductiveは、業務の生産性を上げるために、全ての機能サービスでユーザーエクスペリエンスを統一していることだ。さらに、オフィスアプリケーション「Office 365」との深い連携が可能な点を生産性向上の大きなポイントとして挙げている。
3つ目のIntelligentは、マイクロソフトがこれまで磨き上げてきたAI(人工知能)技術やBI(ビジネスインテリジェンス)機能を標準装備していることだ。AIについては、Azure上で展開している「Cortana Intelligence」も活用できるという。
そして4つ目のAdaptableは、既存のシステム環境も含めてユーザーのビジネスニーズに柔軟に対応できる順応性を備えていることだ。Dynamics 365の中だけでなく、既存の手組みによるシステムや競合アプリケーションとも連携した使い方ができるとしている。
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