第7回(最終回)SaaS型ERP導入の取り組み、その未来はどこへ?:SaaS型ERP導入に失敗しないための「5つのポイント」(2/3 ページ)
最終回の今回は、クラウドを活用したSaaS型ERPの将来と各社の取り組みに加え、それらを導入する際の成功のポイントをまとめました。
Oracle
2012年に発表された「Oracle ERP Cloud」は、グローバル展開を視野に入れた企業向けのSaaS型ERPの代表的なソリューションです。OracleはM&AによってERPのラインアップを拡充し、それらのサービスを統合するのではなく、企業がさまざまなニーズに合わせて選択し、組み合わせて導入できるようにする戦略をとっています。「SaaS cloud application suite」と総称し、SaaS型ERPを中核に、SCM(サプライチェーン管理:Supply Chain Management)、EPM(ビジネスパフォーマンス管理:Enterprise Performance Management)、CX(顧客体験:Customer Experience)、データ分析を組み合わせ、ベストプラクティスを提供しています。
さらに、AIや機械学習、音声によるユーザーインタフェースなどを組み入れた次世代クラウドアプリケーションを発表しました。
2017年には、OracleはSaaS型ERPを専業する老舗であり、高成長を遂げているNetSuiteを買収。これを機に、提供するソリューションをさらに拡充している印象があります。NetSuiteについては後述します。
Infor
Inforは2014年、主要ERP製品について、SaaSの形式で提供を開始すると発表しました。同社は各業界のニーズに特化したSaaS型ERPを戦略の中核に据えています。同社は自動車業界向けのSaaS型ERPの発表を皮切りに、以降、組立製造業やファッション業界、食品飲料業界、中小企業にも提供範囲を拡大し、さらには拡張アプリケーションとしてCRM(顧客関係管理:Customer Relationship Management)や人材採用ソリューションをERPと連携させていて、他社と一線を画した特徴的な戦略を見せています。
NetSuite
NetSuiteは、SaaS型の統合業務アプリケーションソフトウェアの先駆けといえる企業です。同社の製品「NetSuite」は、ERP、CRM、Eコマースなどを含む主要な業務アプリケーション機能を単一のシステムで実現しました。
NetSuiteは、クラウドだけで稼働することを前提に開発されており、さらにはSaaS型でありながら、簡単なマウス操作のみでカスタマイズ可能です。バージョンアップの際にも自動的に顧客のカスタマイズした機能が次バージョンに引き継がれる利便性を強みとしています。
2008年には、日本市場向けに、言語だけでなく日本の法規制や税制、商習慣にまで対応し、本格的にローカライズした「NetSuite-Release J」の提供を開始しています。
SaaS型ERPの動向に見える「3つのポイント」
このように、ベンダー各社がSaaS型ERPに力を入れていることが分かります。こうした動向は、下の3つのポイントにまとめられるでしょう。
- ERPの潮流はSaaS型であり、M&Aや開発の投資もSaaSに集中化している
- SaaS型ERPを中核にデジタル技術を組み合わせることによる、次世代クラウドソリューション化の動きが加速している
- 業界固有の要件にもSaaSで対応できるように、特化型のソリューションも出ている
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