第7回(最終回)SaaS型ERP導入の取り組み、その未来はどこへ?:SaaS型ERP導入に失敗しないための「5つのポイント」(3/3 ページ)
最終回の今回は、クラウドを活用したSaaS型ERPの将来と各社の取り組みに加え、それらを導入する際の成功のポイントをまとめました。
激動のビジネストランスフォーメーション時代で勝ち残るために
さて、ここまでERPベンダーによるSaaS化の動向、戦略を解説しました。その他にも、これまでの連載で取り上げてきた「導入期間短縮」「ガバナンス強化」「業務標準化」「IT部門改革促進」「TCO削減」「拡張性確保」といったメリットを理由に、日本企業でも本社および国内外拠点の基幹システムをSaaS型ERPに置き換える、あるいは検討を進めるケースが増えています。
例えば、ERPを使う企業がグローバル化する際、海外拠点や子会社、関連会社からERP基幹システムへのリアルタイムアクセスやデータの一元管理といった機能が必須になっています。これらの機能が、SaaS型ERPでは実現可能です。また、グローバル規模のBCP(Business Continuity Plan:業務継続計画)やDR(Disaster Recovery:災害対策)の観点からも、SaaS型ERPは非常に有効なソリューションの1つです。
ベンダー各社の取り組みに見られるように、現在SaaS型ERPに投資が集中しています。新たなビジネスニーズへ対応する機能を拡充したり、デジタル技術とSaas型ERPを連携、統合させたりしています。デジタル化や新ビジネスの展開に、SaaS型ERPの検討は必須になってきているといえます。
さらに、クラウドの「どこでも使える」「他のユーザーや機能とつながる」「共有しやすい」といった特性から、1社だけを対象としたソリューションから、業界各社が共同で利用するようなソリューションに今後進化していくことが想定されます。そして、その先には業界の垣根がなくなり、SaaS型ERPが業界横断で連携できるインフラのような役割を果たす可能性も考えられます。
このようなトレンドの中で、オンプレミスを選択し続けていることがビジネスの観点から正しいのかどうか、考えるべき時期に来ているでしょう。今後も企業が健全に成長を続けていくためには、SaaS型ERPやデジタル技術の世界に適応していくことを検討する必要があると筆者は考えています。
SaaS型ERP導入の留意点と成功のポイント
これまで述べたように、SaaS型ERPのもたらすメリットや今後のビジネス展開に対する期待が高まる一方、その導入については幾つか留意しておきたい点があります。以下に、それらの留意点を考慮した上で導入を成功させるためのポイントをまとめました。
SaaS型ERPの導入や活用が常識になる時代はすぐそこに迫り、競合に勝ち抜くためには、Saas型ERPの検討はもはや待ったなしの状況です。
これまでの連載が、SaaS型ERP導入や活用の成功、ひいては読者のビジネスの成功に役立てば幸いです。
著者プロフィール:坂田英寛
KPMGコンサルティング パートナー
約20年に渡って事業競争力向上をテーマとして、事業戦略策定や経営管理改革の支援及び、それらを起点としたサプライチェーン改革について戦略から組織、業務、システムまで、エンドトゥエンドで多数の支援経験を有する。
著者プロフィール:黒木真人
KPMGコンサルティング シニアマネジャー
主に製造業に対して、基幹業務領域、サプライチェーン領域の業務改善・システム導入・運用・保守・改善機会の提案を経営層から現場まで幅広い層に対したコンサルティング業務に従事している。
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