SAPジャパンの事業戦略会見にみる「ITからDX時代への変化」と「ERPサポート延長の背景」:Weekly Memo(1/2 ページ)
SAPジャパンが先頃、2020年のビジネス戦略に関する記者会見を開いた。4月1日付での交代を発表済みの現社長と次期社長がそろって登壇し、社長交代会見の場にもなった。今後の戦略と両氏の話から、ITからDX時代への変化を探ってみたい。
2020年は「Customer First」「Co-innovation」「One Team」を推進
「お客さまのデジタルトランスフォーメーション(DX)になくてはならない存在になる」――。SAPジャパンの次期社長に4月1日付で就任予定の鈴木洋史氏は、同社が先頃開いた2020年のビジネス戦略に関する記者会見で、自らの目標についてこう語った。
現在、同社の常務執行役員インダストリー事業担当を務める鈴木氏は、日本アイ・ビー・エム理事などを歴任して2015年1月にSAPジャパンに入社。本人によると「これまで30年間、複数の外資系IT企業に勤務し、ほぼ一貫してエンタープライズアプリケーション分野で仕事をしてきた」という。
会見には、現社長の福田譲氏も登壇したことから、社長交代会見の場にもなった。福田氏は鈴木氏について「顧客指向が極めて強く、テクノロジーをビジネスの成果にどう結び付けていくかを深く理解している。私としては心配することなくバトンを渡せる」と述べた。
本稿では、この会見で説明された同社のビジネス戦略や両氏の話から、DX時代への変化を探ってみたい。
まずは2020年のビジネス戦略だが、その前に2019年度(2019年12月期)のSAPグローバルとSAPジャパンの業績について興味深い説明があった。
鈴木氏によると、SAPグローバルの2019年度の売上高は前年度比9%増の276億3400万ユーロ(1ユーロ120円換算で3兆3160億円)。そのうち、クラウド関連事業は前年度比35%増の70億1400万ユーロ(8416億円)。同氏はクラウド関連事業の伸び率の高さを強調していたが、筆者は売上高クラウド比率に着目した。計算すると25%。計上の仕方を確認する必要があるが、着実にクラウドへの移行を進めていると感じた。
また、図1がSAPジャパンの売上高の推移である。2019年度は前年度比15%増の11億8000万ユーロ(1416億円)だった。鈴木氏はSAPグローバルよりも高い伸び率を強調していたが、筆者はSAPグローバルとの売上高比率(4.3%)が気になった。
それもさることながら、これまで明らかにしてこなかったSAPジャパンの業績について、今回は2014年からの5年間で1.5倍の成長を達成したことを一目で示したかったようだ。ちなみに2014年は福田氏が社長に就任した年である。
さて2020年のビジネス戦略だが、鈴木氏は冒頭で紹介した自らの目標を達成するために、顧客指向をさらに徹底させる「Customer First」、多くの顧客企業やパートナー企業と取り組む「Co-Innovation」、同社の社員が一丸となって取り組む「One Team」の3つのアクションを押し進めていくと説明した。
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