ソフトウェアベンダー大手4社の動向にみるエンタープライズIT市場の行方:Weekly Memo(1/2 ページ)
2020年、エンタープライズIT市場はどう動くか。Microsoft、Oracle、SAP、Salesforce.comのソフトウェアベンダー大手4社の動向から、同市場の行方を筆者なりの視点で探ってみたい。
ソフトウェアベンダー大手4社の影響が大きいエンタープライズIT市場
エンタープライズIT市場といえば、ソフトウェアだけでなくハードウェアやサービスも含めた市場を指す。しかしその動向の核心部分はソフトウェアにあるというのが、筆者の見方だ。その中でもグローバルソフトウェアベンダー大手4社の影響力はひときわ大きい。
なぜならば、MicrosoftはOS(Windows Server)と「Microsoft Office」、Oracleはデータベース、SAPはERP、Salesforce.com(以下、Saleforce)はCRMの領域で、それぞれエンタープライズIT市場をリードしているからだ。
今回はこの4社をソフトウェアベンダーとして見ているが、MicrosoftとSalesforceはパブリッククラウドサービスベンダーとしても大手であり、OracleとSAPもクラウドサービス事業に注力している。
そんな4社の動向から、今後のエンタープライズIT市場の行方として、筆者なりに3つの注目点を挙げてみたい。
1つ目は、「既存の基幹系システムのモダナイズとクラウド化」である。この動きで筆者が特に注目するのは、SAPの最新ERP「SAP S/4HANA」(以下、S/4HANA)およびOracleの最新データベース「Oracle Autonomous Database」が広く受け入れられるかどうかだ。
従来の「SAP ERP」「Oracle Database」の顧客企業は超大手や大手が多く、そのため同製品はエンタープライズIT市場の象徴的な存在と見なされていた。しかしクラウド化をはじめとしてデジタルトランスフォーメーション(DX)時代に移行しても、変わらぬ存在感を発揮し続けられるのかどうか、注目されるところだ。
ちなみにSAPジャパンが先頃、S/4HANAに関する記者説明会で公表したところによると、2015年に登場したS/4HANAはこれまでグローバルで1万2000社以上の顧客企業が導入を開始しており、そのうち3700社以上が稼働済みだという。日本でのユーザー数は明らかにしていないが、半数以上がクラウド版の「S/4HANA Cloud」を選択しているそうだ。(図1)
同社はこれまでS/4HANAの普及状況を具体的に公表してこなかったが、実績数字が出てくるようになったのは、手応えを感じているからだろう。日本の実績数字もぜひ公表してほしいところだ。SAP ERPについては、2025年に旧来版のサポートが終了することから、経済産業省が2018年に発表したDXレポートで警鐘を鳴らす「2025年の崖」問題の大きな要因にもなっている。
既存の基幹系システムのモダナイズとクラウド化は、この2025年の崖問題を乗り越える手だてとなるだけに、注視していきたい。
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