ソフトウェアベンダー大手4社の動向にみるエンタープライズIT市場の行方:Weekly Memo(2/2 ページ)
2020年、エンタープライズIT市場はどう動くか。Microsoft、Oracle、SAP、Salesforce.comのソフトウェアベンダー大手4社の動向から、同市場の行方を筆者なりの視点で探ってみたい。
4社中3社の日本法人トップが交代して新たな経営体制へ
2つ目の注目点は、「マルチクラウド化」である。エンタープライズIT市場の話では頻繁に出てくるキーワードなので新味がないが、複数のクラウドサービスが問題なく利用できるようになれば、それぞれの領域で市場をリードするソフトウェアベンダー大手4社のクラウドサービスが引き続き存在感を発揮するだろう。
例えば、Oracleは今、データベースを軸としてインフラからアプリケーションまで全ての領域でクラウドサービスを展開している。しかしクラウド事業自体が後発だったこともあって、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft、Google、Salesforceといったパブリッククラウドサービス大手には追い付けていない。Oracleのデータベースがクラウド上でもこれまでのオンプレミスと同様に利用できる環境が整えば、マルチクラウドの1つとして欠かせない存在になる可能性は高い。
ただマルチクラウドについては、データの取り扱いをはじめとして、運用環境やセキュリティ対策、さらに実際にパフォーマンスが出せるのか、といったさまざまな課題をクリアしなければならない面がある。そうした課題にソフトウェアベンダー大手4社がどのように対処していくのかにも注目していきたい。
3つ目の注目点は、「日本法人の経営トップの手腕」である。上記の2つとは異なる観点だが、4社のうち3社で経営トップ交代が相次いだので、注目点の1つに挙げた。
具体的には、2019年9月に日本オラクルのCEOにケネス・ヨハンセン氏、10月に日本マイクロソフトの社長に吉田仁志氏が就任。2020年を迎えてすぐにSAPジャパンの福田譲氏が3月31日付けで社長を退任し、4月1日付けで常務執行役員の鈴木洋史氏が昇格する人事が発表された。
ちなみに、福田氏は4月1日付けで日本の事業会社にCIO(最高情報責任者)兼デジタル変革(DX)推進担当役員として入社する予定だ。ITベンダーからユーザー企業へ転身し、自らの技能を現場で実践しようというものだが、ご本人は覚悟の上で意欲満々の様子だ。同氏のチャレンジもなかなか変身できない日本企業の行方を探る意味で大いに注目していきたい。
福田氏については、2019年12月16日掲載の本コラム「SAPジャパンが示すDX支援『エコシステム』型協創は定着するか――SAPジャパン福田譲社長に2020年の展望を聞く」において、新社長に就任する鈴木氏も踏襲するであろう同社の重点方針における考え方や思いを記しているので参照していただきたい。
また、本コラムでは、日本マイクロソフトの吉田氏の発言、日本法人社長に就任して今年で6年目に入るセールスフォース・ドットコムの小出伸一氏の発言も取り上げている。さらに日本オラクルのヨハンセン氏については、ITmediaエンタープライズ編集部のインタビュー記事がつい先頃掲載されたので、ご参照いただきたい。
これらソフトウェアベンダー大手4社の日本法人トップが、今後どんな発言や経営手腕を発揮するか。引き続き注目していきたい。
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