富士通とNECのトップはコロナ危機について何を語ったか:Weekly Memo(1/2 ページ)
コロナ危機に対して、ITベンダーはどう臨もうとしているのか。富士通とNECのトップが決算会見で、相次いで言及した。キーワードは「DX」。両氏は果たして何を語ったか。
企業の投資は「守りのIT」から「攻めのIT」へシフト
富士通とNECが先週、相次いで2020年3月期の決算発表を実施した。富士通の時田隆仁社長とNECの新野隆社長はそれぞれの会見で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大による「コロナ危機」の影響や対応、今後の企業のIT投資動向について語った。日本を代表するITベンダーの両社は、コロナ危機にどう臨もうとしているのか。今回はその要点を取り上げて考察したい。
富士通の時田氏は2020年5月14日に開かれた会見の中で、コロナ危機に対する考え方について「お客さまや取引先、従業員とその家族、地域社会を含むステークホルダーの生命の安全を最優先する。感染予防と感染拡大の防止に努めると同時に事業継続活動に取り組み、社会的責任の遂行に努める」と述べた。
コロナ危機の影響や対応については「デジタル化やオンライン化が急速に進み、これまでの社会の在り方や人々の考え方が大きく変化し始めている。従来は対面を前提としてきた生活やビジネスシーンが、今後はオンラインの場で行われることがスタンダードになる。これまで以上に人を中心としたデータの動きがより複雑になっていく中で、安全、安心で利便性の高い社会づくりが求められるようになってくる」と同氏は話した。
その上で、時田氏は富士通の役割について次のように語った。
「こうした変化の先にあるのは、当社がデジタルトランスフォーメーション(DX)を通じて実現しようとしている社会の姿そのものだ。その視点を軸として、当社ならではの多様な業種理解とデジタルテクノロジーを活用し、人とデータを中心とした新たな生活様式を築いていく役割を果たしたい」
また、同氏はそうした社会の変化に対する富士通のデジタルテクノロジーの活用例として、図2に示すように「研究」「医療」「行政」の3分野における取り組みを紹介した。
では、今後の企業のIT投資動向についてはどう見ているのか。同氏は「ITに対する投資の考え方が大きく変わるのではないか。これまで日本の企業のIT投資は『守りのIT』に比重がかかっていたが、これから最優先すべきはコロナ対策も踏まえた『攻めのIT』で、投資内容の選択と集中が進むのではないかとみている」と予測。「その攻めのITこそがDXだ。こうしたIT投資のダイナミックなシフトにしっかりと応えられるように尽力したい」との意気込みを語った。
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