アフターコロナの経営に必須 マネジメント視点でみた「在宅勤務」の生かし方とは:Weekly Memo(2/2 ページ)
新型コロナウイルスの感染対策で、テレワークによる在宅勤務が広がっている。企業としてはこの動きを経営に生かしていきたいところだ。在宅勤務をマネジメントの視点で考察してみたい。
在宅勤務の効率で「下がった」との回答が3分の2に
次に、富士通マーケティング(FJM)と日本デジタルトランスフォーメーション推進協会(JDX)の主催で2020年5月19日、在宅勤務をテーマに開催されたオンライン座談会から、マネジメント視点で印象的だった発言を記しておこう。
座談会の登壇者は、富士通の中山五輪男氏(理事 首席エバンジェリスト)、JDXの森戸裕一氏(代表理事)、FJMの田中貴之氏(商品企画部長)、進行役を務めたカウンティアの田原彩香氏(最高執行責任者(COO))だ。「待ったなしのテレワークで気づいたアフターコロナの働き方」と題して2時間にわたって緊急開催された。
まず、富士通の中山氏が「管理者からみたテレワーク」として幾つかポイントを挙げた。その中から次の3つを紹介しておこう。
- まずは管理者自身が新しい働き方やツールに挑戦しよう。どんなツールも1回使えば慣れる
- 社員の行動を厳しく管理しない。勤務時間ではなく、社員の成果で評価する
- どうせ外出自粛だからと、つい土日も仕事してしまいがち。部下の休息も気遣うべし
いずれも中山氏の体験談だとか。マネジャーにとっては耳の痛い話だろう。
JDXの森戸氏は、企業の姿勢について次のようにアドバイスした。
「生産性の向上、オフィスコストの削減、非常時における事業継続性の確保など、テレワーク導入を企業のアピールポイントにしよう。さらに、近年のワークライフバランスを重視する傾向に対し、どのような職場環境が優秀な人材を引き付けるのかを考えよう」(森戸氏)
これらのアドバイスは、まさしく先述のPwCコンサルティングのレポートによる在宅勤務のメリットを、企業として前面に押し出していこうというものである。
FJMの田中氏も森戸氏に続いて、「コロナ危機を逆に好機と捉えて働き方を変えていかなければならない」と、企業に対して奮起を促した。
ちなみに、この座談会にはおよそ1300人が参加。視聴者もチャットで質問や感想を送り、登壇者とライブでやりとりできるとあって、イベントとしてけっこうな盛り上がりを見せていたとともに、在宅勤務への関心の高さをうかがわせた。
最後に、気になる調査結果があったので取り上げておきたい。
日本生産性本部が2020年5月22日に発表した「新型コロナウイルスの感染拡大が働く人の意識に及ぼす調査」レポートは、2020年5月11〜13日に、企業に勤める20歳以上の1100人に調査を実施し、回答を得た結果をまとめたものだ(有効回答数319件)。図に示すように、在宅勤務の効率について「上がった」は7.2%、「やや上がった」は26.6%で合計33.8%。逆に「下がった」は24.8%、「やや下がった」は41.4%。合計66.2%となり、「下がった」が「上がった」を上回って全体の3分の2を占めた。
この結果の背景として、子どもの有無や家族構成、年代や性別との関係は見られなかったという。つまりデータ上は、家庭事情と生産性の因果関係はなかったということだ。
これまでの在宅勤務に関する調査では、効率性や生産性について肯定的な結果が多かった印象があるが、ここにきて実情が明らかになってきたとも考えられる。もし、本当に効率性や生産性に問題が出ているとすれば、いよいよ経営サイドがマネジメントの問題として、本腰を入れて改善に取り掛かるべき「経営の出番」である。
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