AWSやMicrosoftを追撃、Google Cloudは企業のIT基盤として広がるか:Weekly Memo(2/2 ページ)
コロナ禍でパブリッククラウドへの企業ニーズが高まる中、その基盤サービス市場の勢力争いでは、先行するAWSとMicrosoft AzureをGCPが追撃するという構図だ。GCPが日本企業へさらに普及拡大していく決め手は何か。Google Cloud日本法人が開いたイベントから考察してみた。
データの分析・活用技術とノウハウの蓄積が強み
グーグル・クラウド・ジャパンはこのイベントの初日、Google Cloudのパートナーにアビームコンサルティング、日立製作所、SCSKの3社が加わったことを発表した。図2はその3社とともに、左下にシステムインテグレーター(SIer)を中心とした「サービスパートナー」、右下に技術面で協業する「テクノロジーパートナー」の主要な企業名を記したものである。
基調講演では、今回パートナーに加わったSCSKの社長であり最高執行責任者(COO)および執行役員を務める谷原徹氏が次のようにスピーチした。
「当社は2020年4月、2030年に『共創ITカンパニー』を実現することを宣言した。異業種連携によって新しいビジネスを創出していくことで、さまざまな社会課題の解決へ貢献していきたい。そのために、Google Cloudとのパートナーシップは当社にとって非常に重要なことだと捉えている」
続けて、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)常務執行役員の粟井利行氏が次のようにスピーチした。
「企業のIT環境は今、クラウド化が急速に進んでいる。特にAIやデータ分析などの次世代ITプラットフォームとして、Google Cloudへの期待がますます高まっている。当社としてもマルチクラウドを取り扱うクラウドインテグレーターとして、Google Cloudとともにお客さまと未来を開くご支援をしていきたい」
両社のスピーチのポイントは、有力なSIerがGoogle Cloudとのパートナーシップの意義を「未来志向」で述べている点である。GCPが日本企業へさらに普及していけるかどうかは、有力なSIerとどれだけパートナーシップを結べるかにかかっている。Google Cloudもそれを踏まえて、基調講演のスピーチをSCSKとCTCに依頼したと見て取れる。
新たなパートナーも加わって着実にエコシステムを拡大しているGoogle Cloudだが、パブリッククラウド基盤サービスで先行するAWSやAzureのパートナーエコシステムと比べると、総合的にまだまだ追い付けていない。それが、そのまま今の市場の勢力図になっているというのが、筆者の見方だ。
会見で「GCPが先行するAWSやAzureを追撃する決め手は何か」と問われた平手氏は次のように答えた。
「Google Cloudには、これまで長年にわたってサービスとして手掛けてきた最先端のAIを駆使したデータの分析、活用技術とノウハウが蓄積されている。それらをパートナー企業とともに、個々のお客さまのニーズに合わせてクラウドを通じてきめ細かくお届けできることが決め手になると確信している」
パブリッククラウド基盤サービス市場の健全な発展を考えれば、GCPがもっと普及拡大してAWS、Azureと「三つどもえの合戦」になるのが望ましいかもしれない。企業へのパブリッククラウド基盤サービスの普及率はまだ2〜3割ともいわれる。ただ、ハイブリッド型のIT基盤が定着しそうな中でパブリッククラウド基盤サービスの普及率の上限をどう見るかという議論もある。
いずれにしても、利用する企業からすれば、市場が一段と活性化して高度なレベルのコストパフォーマンス競争を期待したいところである。
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