10年後も生き残る企業を分けるもの――HPEのCEOが説く「DXの勘所」:Weekly Memo(2/2 ページ)
HPEのCEOが自社イベントで、「企業におけるDX推進の勘所」について語った。キーワードは「インサイト」と「エッジ」だ。ユーザー視点で考察したい。
10年後には60%の企業が存在していない可能性も
ネリ氏の講演の中でもう1つ印象深かった部分は、Cisco Systems(以下、Cisco)の前CEOであるジョン・チェンバース氏との対談だ。チェンバース氏はCiscoのCEOを20年間務め、現在は自ら創業した投資会社JC2 VenturesのCEOに就いている。ネリ氏はチェンバース氏を「友人」と紹介して招き入れ、およそ10分間対談した。そのやりとりから一部を抜粋して紹介しよう。
ネリ氏: 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的な流行)の影響をどのように見ているか。
チェンバース氏: 社会のありようが大きく変わるのではないか。DXについても加速するのは間違いない。
ネリ氏: どれくらいの変化が起きると予測しているか。
チェンバース氏: アフターコロナのニューノーマル(新常態)は、これまでのさまざまな価値観が大きく変わる。企業がどうなるかという観点でいうと、10年後には60%が存在していないかもしれない。商品という観点ではもっと短く、3年後には多くが消えてしまっているのではないかと見ている。それくらいの大きな変化が起きるだろう。
ネリ氏: DXの話では、HPEとしては、これからの10年を企業にとってインサイトで勝負する時代と見据え、それに向けてエッジの活用が非常に重要になると考えているが、あなたはどう見ているか。
チェンバース氏: CEOとしてこれからの10年を見据えることは、とても大事なことだ。私もCisco時代に長期での成長戦略を常に描いていた。それが今は、投資家の視点にもなっている。エッジコンピューティングは、これから市場が大きく広がっていくのではないか。HPEにとって大きなビジネスチャンスになるだろう。
ネリ氏: 企業にとってDXの推進は、デジタル技術をビジネスに活用していくことだけでなく、そうした企業文化を醸成していくことも非常に大事だと考えるが、あなたの意見を聞かせてほしい。
チェンバース氏: 全く同感だ。そうした変革は、企業にとって一時期の取り組みではなく、まさしく「ジャーニー」(旅路)、ずっと続いていくことを肝に銘じておく必要がある。さらに私の経験でいえば、CEOが自ら変革の先頭に立ち、その必要性を全社に浸透させていく努力をしなければならない。
両氏の会話は示唆に富んでいたが、中でも「10年後には60%の企業が存在していないかもしれない」というチェンバース氏の警鐘は衝撃的だった。10年後も勝ち残っている企業になるために、先に紹介したネリ氏のメッセージを胸にとどめておきたいものである。
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