ただのアウトソーシングではない、情シスの“ステップアップ”にコミットするサービスを始めたIIJの思惑:Weekly Memo(1/2 ページ)
企業の情報システム部門が担う業務について、品質を保証して丸ごと請け負うサービスが登場した。IIJが提供を開始した「ストラテジックITアウトソーシング」だ。ユーザーメリットとともに同社の思惑を探ってみたい。
IIJが始めた「ストラテジックITアウトソーシング」とは
インターネットイニシアティブ(IIJ)は2020年7月13日、情報システム部門に代わって企業のITインフラに関わる業務と資産調達を丸ごと請け負うサービス「ストラテジックITアウトソーシング」の提供を開始した。
ストラテジックITアウトソーシングは、ITインフラの戦略立案、企画検討から調達、構築、運用まで、情報システム部門の役割を丸ごと引き受ける(図1)。
IIJは同サービスを始めた背景について「国内企業の情報システム部門は、既存システムの運用やシステムアーキテクチャの刷新、ITコストの削減など日々のミッションを遂行する一方で、クラウド活用の推進やデジタルトランスフォーメーション(DX)施策の対応など、いわゆる戦略的なITへの取り組みが求められている。しかし、DXの取り組みの成功事例は一握りで、多くの企業は組織構造やレガシーシステム、情報システム部門の人材不足などが影響して苦戦しているのが現状だ」と説明する。
その上で「情報システム部門の予算や人的リソースの大半も既存システムの維持や効率化、利便性を高めるための『守りのIT』にかけられ、企業変革や競争力強化を目的とする戦略的な『攻めのIT』に対して大幅な投資ができないことが企業の課題になっている」と指摘した。
ストラテジックITアウトソーシングは、こうした課題を解消するためのサービスだという。最大の特徴は、ユーザー企業の要望に応じてITインフラのシステムや役務を提供してきた従来型のアウトソーシングサービスとは異なり、情報システム部門の業務全般を代行する体制を提供し、ユーザーとの契約で設定したKPI(重要業績指標)にコミットする点にある。
KPIの例としては、毎年x%削減といった指標による「継続的なITコスト削減」、インフラの機能やスペックレベルを指標とする「システム性能の向上」、n年後までにm人増員するといった指標による「高度IT人材の育成」などがある。
同サービスは、ただのアウトソーシングではない。同サービスが目指すのは、企業の情報システム部門を従来のITインフラ対応業務から切り離し、適切なコスト状態を維持しながら人的リソースを戦略的なIT活用にシフトできるようにすることだ。
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