運輸業のDXを推進する「MaaS」は、コロナ禍でどう成長するのか:Weekly Memo(1/2 ページ)
AWSジャパンが次世代移動サービス「MaaS」支援の取り組みを明らかにした。その内容を紹介しながら、「運輸業のDX」と目されるMaaSの今後の普及におけるポイントを探ってみた。
AWSクラウドがMaaSの推進を支援できる理由とは
アマゾンウェブサービスジャパン(以下、AWSジャパン)は2020年8月19日、次世代移動サービス「Mobility as a Service(MaaS)」支援事業とともに、小田急電鉄が推進するMaaSの仕組みをAWSクラウドで支援することについてオンライン形式で記者説明会を開いた。
「運輸業のデジタルトランスフォーメーション(DX)」と目されるMaaSは、国土交通省の定義によると「地域住民や旅行者一人一人のトリップ単位での移動ニーズに対応して、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索、予約、決済などを一括で実施するサービス」のことである(図1)。
MaaSには関係するサービス事業者が数年前から取り組み始め、行政も注力してきた。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大に伴い、人の移動が制限されたことから、ここ数カ月は大きな影響を受けている。ただし、その利便性や安全性はコロナ禍でさらに進化するとも見られており、世間的な関心は依然として高いようだ。そのような状況下で、AWSジャパンの今回の会見には注目が集まった。
会見では、AWSジャパンの岡嵜 禎氏(技術統括本部長執行役員)、小田急電鉄の西村潤也氏(経営戦略部次世代モビリティチーム統括リーダー)、小田急電鉄に技術支援を提供したヴァル研究所の見川孝太氏(CTO:最高技術責任者)が説明に立った。
岡嵜氏はMaaSのポイントについて図2を示しながら、「これまでは個別に提供されていたモビリティサービスをつなげてデータを一元化し、ワンストップで利用できるようにした点だ」と説明した。
AWSクラウドがMaaSの推進を支援できる理由として、岡嵜氏は「エマージングビジネスを支えられる経済性やスケーラビリティ」「異業種連携を支えられるセキュアなデータ連携」や「グローバル規模で展開していること」などを挙げた。同氏は「多くのMaaS関連のサービス事業者がAWSクラウドを活用していることから、ビジネスエコシステムを形成しやすい」と強調した(図3)。
同氏はさらに、今後MaaSを手掛けたいというサービス事業者に対し、MaaSのレファレンス実装をテンプレートとして提供する「AWS Connected Mobility Solution(CMS)」を年内に提供することも明らかにした(図4)。
関連記事
- 「Weekly Memo」記事一覧
- “MaaS”に“RaaS”に“BaaS”が登場 MSが成果を上げるクラウド推進の体制とは
日本マイクロソフトのインダストリー別専門組織体制は、クラウド事業の推進において重要な役割を担っている。どのような役割で、どのような成果をあげているのだろうか。 - 日本マイクロソフト、MaaS企業向けの支援策を開始
日本マイクロソフトは、利用者志向で革新的なサービスを提供するMaaS(Mobility as a Service)の実現に向けた支援策を開始する。MaaSリファレンスアーキテクチャや、MaaS技術者育成プログラムなどを提供する。 - 複数の交通事業者のデータをシームレスに共有する「MaaS向けデータ基盤」開発開始
NEDOは、MaaSに向けた移動情報統合データ基盤の開発を開始すると発表した。複数の交通事業者の異なるシステムの間でデータをシームレスに共有し、分析できるようにする。飲食や宿泊といった交通事業者以外の事業者とのデータ連係も図る。 - 通院や買い物に合わせて「AI運行バス」を予約 地域サービスとの連携でMaaSの実現へ――横須賀市で実証実験
神奈川県横須賀市、京急電鉄、NTTドコモらは、2019年12月9日から地域サービスと連携した「AI運行バス」の実証実験を開始する。医療機関や商業施設の業務システムとAI運行バスのシステム連携により、通院や買い物の予定に合わせたバスの予約ができる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.