中小企業のDXは「SaaS」だけで実現できる――セールスフォースの新施策が示す可能性:Weekly Memo(2/2 ページ)
企業のITにクラウドサービスが使われるようになってきた中で、特に中小企業においてはSaaSで全てカバーできるのではないか。筆者はかねてそう思ってきたが、セールスフォースの新施策を聞いて、その意を一層強くした。どういうことか、解説しよう。
「企業のこれからのIT基盤」に向けたSaaSMixとは
企業がこれからのIT基盤を構築していく上で、セールスフォースが新たな施策として打ち出したのがSaaSMixだ。御代氏によると、SaaSMixとは「複数のSaaSを連携して、企業IT基盤において部分最適にならないように複数の業務のクラウド化を推進すること」だという。
では、SaaSMixによってこれからのIT基盤をどのように構築していけばよいのか。複数のSaaSの出どころとなるのが、セールスフォースが運営しているSaaS向けアプリケーションのマーケットプレース「AppExchange」である。ここには同社のPaaS(Platform as a Sevice)につくられたアプリケーションの他、同社のCRMとシームレスに連携できるパートナーのSaaSも登録され、その数は合計5000本を超える。同社のユーザーの88%がAppExchangeを利用しているという。
図4に示したのが、SaaSMixを活用したイメージである。セールスフォースのCRMにマーケティングや商談、カスタマーサービス、全社共通・バックオフィスといった領域のSaaSを連携する。これにより、簡単にインストールして使え、安全、安心で、継続的に機能改善でき、多数のパートナーが導入や活用を支援してくれるようなIT基盤を構築できるというわけだ。
SaaSMixの説明を聞き、さまざまな取材を通じて「企業ITのクラウド化が進む中、特に中小企業においてはSaaSで全てカバーできるのではないか」と思っていた筆者は、その意を一層強くした。そこで、会見の質疑応答で単刀直入に「中小企業ではIT基盤をSaaSMixで全てカバーできると考えているか」と聞いてみた。すると、御代氏は次のように答えた。
「SaaSMixは個別のSaaSで部分最適にならないように、複数の業務をつなげて利用できるようにしようという考え方を提案したものだが、企業のIT基盤の全てをカバーできるとは考えていない」(御代氏)
確かに、同氏はSaaSMixの説明の中で「部分最適にならないように」とは幾度も述べたが「全体最適を目指す」とは一度も言っていない。ただ、図4に記しているように「これからの時代のIT基盤」と銘打っているところからすると、それをセールスフォースがリードしていくという意気込みは十分だと見て取った。
筆者はSaaSMixをみて改めて「中小企業のIT化はSaaSだけで実現できる」と確信した次第である。
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