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顔認証技術の最前線と可能性、マイナンバーとの連携を進めよWeekly Memo(2/2 ページ)

デジタル社会では多くのケースで本人確認が求められるようになる。その技術として顔認証が注目されている。この分野をリードするNECの話をもとに、その最前線と可能性について考察したい。

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マスク着用時でも高精度な顔認証を実現

 顔認証技術の最前線に話を移そう。NECが開発したマスク着用時でも高精度な認証を実現する新たな顔認証エンジンがまさしくそれだ。

 顔認証は通常、目や鼻、口などの位置や形、大きさといった特徴点を抽出し、照合するものだが、新たなエンジンは、マスクで覆われていない目の周辺に重点を置いて特徴点を抽出、照合する。

 新エンジンを活用した顔認証プロセスは、まず、カメラで撮影し検出した顔画像から、マスク着用の有無を判定する。次に、それぞれの場合で使用する顔認証アルゴリズムを切り替えて特徴点を抽出し、照合する。これにより、マスク着用者と非着用者が混在しても、高精度な認証を実現している。(図5)

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図5 マスクに対応そた顔認証のフロー

 NECによれば、新エンジンは、社内評価時にマスク着用時に99.9%以上の認証精度と1秒以内の認証速度を実現した。また、さまざまな色や柄のマスクにも対応できるようにした。今岡氏によると、高い実用性を確認できたことから、今回の発表に至ったという。

 同社が新エンジンを開発したのは、他でもない新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な拡大への対策として、マスクの着用がニューノーマル(新常態)になりつつあるからだ。

 それに伴い、PCのログイン、施設の入退場や公共機関などにおける本人確認の用途で幅広く使われている顔認証にも対策が求められている。今岡氏は「世界中から非常に多くの要望があり、急ピッチで開発を進めた」という。

 では、顔認証技術の今後の可能性についてはどうか。NECは図6に示すように、生体認証IDであらゆるサービスを結び付け(コネクト)、各個人に最適化(パーソナライズ)していく世界を目指す構えだ。

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図6 生体認証技術の今後の活用領域

 最後に、筆者もこの機に1つ提案したい。顔認証が本人確認のスタンダードな技術になっていくのならば、マイナンバーと連携させて、政府や自治体が収集、管理、運用する形にすればどうか、というものだ。行政の責任を明確にした上で、その仕組みを一元管理する公的機関を設けてもいい。

 ただ、それではジョージ・オーウェルが小説「1984年」で描いた監視社会のようになるのではないかと懸念する向きもあるだろう。筆者はむしろ、スタンダードな技術として公的に管理、運用し、使用目的を徹底して明確にする仕組みを作った方が、安全かつ安心だと考える。民間でばらばらに保有され、何に使われるか分からなくなってしまうような事態は避けたい。

 マイナンバーと顔認証技術を連携させた使い道については、NECも地方自治体と実証実験を進めており、新政権がマイナンバー制度の普及に注力するのを表明していることからも、今後この動きが加速していく可能性は高いのではないか。

 発表会見の質疑応答で、「顔認証が本人確認のスタンダードな技術になっていくか」と単刀直入に聞いてみたところ、今岡氏は「ぜひ、そうしたい」と即座に答えた。デジタル社会に不可欠な技術として注目していきたい。

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