政府のデジタル化推進にみるDXの勘所とは? 平井担当大臣やIT業界キーパーソンの発言から読み解く:Weekly Memo(1/2 ページ)
政府がデジタル化推進に向けて動き出した。うまく事を運ぶポイントはどこにあるのか。それは企業のDXにとっても参考になるはずだ。平井担当大臣やIT業界のキーパーソンの発言から読み解いてみたい。
デジタル庁は「成長戦略の柱」であり「規制改革の象徴」
政府がデジタル化推進に向けて本格的に動き出した。2020年末までに基本方針を策定し、次の国会で法整備を進め、活動の要となる「デジタル庁」を2021年9月にも創設してデジタルトランスフォーメーション(DX)にまい進する構えだ。
うまく事を運ぶポイントはどこにあるのか。それは企業のDXにとっても参考になるはずだ。政府のデジタル化推進役を担う平井卓也氏(デジタル改革担当大臣)やIT業界のキーパーソンによる最近の発言から読み解いてみたい。
平井氏は2020年11月12日、NECがオンラインで開催した「NEC Visionary Week」のキーノートで、デジタル庁の創設についてこう語った。
「現政権にとっては次の時代を描く“一丁目一番地”の政策だ。成長戦略の柱であるとともに、規制改革の象徴でもある。デジタル庁を要として行政のDXを進めていけば、やがては日本の社会も大きく変わっていく」(平井氏)
同氏が挙げたDX推進のポイントは「人間を中心に全てを見直すこと」だ。
「各行政機関はこれまでさまざまなシステムを構築してきたが、ユーザーからすれば使いづらいものが少なくない。それらのシステム刷新に当たってデジタル庁が取りまとめ、ユーザーエクスペリエンス(UX)を最重視していく。そして将来的には、デジタル技術を意識しなくて済む『人間に優しい社会』を実現していきたい」(平井氏)
同氏は、人間を中心に全てを見直すことを「国民目線」とも表現し、「デジタル庁は国民目線だと、国民の皆さんに信頼していただけるようになることが、行政のDXを押し進める決め手になる」とも強調した。さらに、デジタル庁の活動の進め方についても、次のように言及した。
「国民目線の活動を行っていくことは基本原則だが、その進め方については、例えばサービスにおいて常に完全であることよりも、不完全ながら素早く提供して使ってもらいながら、より良いものにしていく『アジャイルガバメント』の手法を取り入れて柔軟に動いていきたいと考えている。また、今後は必要に応じてさまざまな組織ができるだろうが、基本的に『小さく生んで大きく育てる』ようにしたい。このように、活動の進め方や組織の在り方についても、新しいカルチャーを積極的に取り入れていきたい」
平井氏の話から、企業のDXにも参考になりそうな発言を抜粋してみた。筆者がピンと来たキーワードは、「成長戦略の柱」「規制改革の象徴」「UX」「国民目線」「アジャイル」「小さく生んで大きく育てる」――である。
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