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やっとクラウド化したのに“柔軟性のないシステム”を作ってしまう企業に足りない視点とは――ガートナーWeekly Memo(1/2 ページ)

10年後を見据えた情報システムはどうあるべきか。多くの企業が頭を悩ませるこの問題に対し、ガートナーのアナリスト亦賀忠明氏が、クラウドをテーマにした講演の中で「新築」に取り掛かれ、と提言した。今回はこの話について考察したい。

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クラウドがデジタルディスラプションの原動力に

 「企業は10年後を見据えて、クラウドを活用した情報システムの『新築』に取り掛かるべきだ」――。こう語るのは、ガートナー ジャパン(以下、ガートナー)の亦賀(またが)忠明氏(リサーチ&アドバイザリ部門 ディスティングイッシュト バイスプレジデント アナリスト)だ。同社が2020年11月17〜19日にオンラインで開催した「Gartner IT Symposium/Xpo 2020」の「クラウドコンピューティング・トレンド2021」と題した講演での発言である。

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ガートナー ジャパンの亦賀忠明氏(リサーチ&アドバイザリ部門 ディスティングイッシュト バイスプレジデント アナリスト)

 「新築に取り掛かるべき」とはどういうことか。今回は、亦賀氏がこう提言した背景を探りながら、10年後を見据えた情報システムの在り方について考察してみたい。

 まずは、企業の情報システムのスタイルにおける変遷について見てみよう。同氏は図1を示し、過去から現在、未来へ向けて「メインフレーム」「オープン」「クラウド」「メッシュ」と大きく4つの変化があることを説明した。

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図1 企業の情報システムのスタイルにおける変遷(出典:ガートナー)

 この図によると、現在は「クラウド」の時代に当たるが、実態としてオンプレミスの企業ITシステムはまだまだ多い。この点について同氏は、「クラウドへの移行は10年前から始まっているが、そのスピードはゆっくりしたものだ。ただ、今後はクラウド本来の破壊的なイノベーションが広がり、10年後からはさらに新しいスタイルへと移行していく」との見方を示した。

 ちなみに、図1に新しいスタイルとして記されているメッシュは、クラウドからエッジ処理やIoTによって分散コンピューティングが広がっていく状態を指す。また、下段に「いつまでも同じ議論をしない」とあるのは、「クラウドへ移行するかどうか」の議論についての同氏の見解である。

 なぜ、クラウドへの移行について同じ議論が繰り返されるのか。それはクラウドが正しく理解されていないからだという。同氏は次のように説明した。

 「クラウドとは、スケーラブルかつ弾力性のあるITによる能力を、インターネット技術を利用し、サービスとして企業内外の顧客に提供するコンピューティングスタイルである」

 さらに、こう続けた。

 「ビジネススタイルが変わりつつある中でクラウドの利用効果は増大している。さらにクラウドがデジタルディスラプションの原動力になっているのは事実だ。従って、企業は今後、スタイルチェンジができないと特段のビジネスメリットは生み出せない」

 要は、クラウドは今必要なスタイルであり、スタイルチェンジができないと、企業は競争力を発揮できない――。筆者はそう受け止めた。

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