「スマートシティ」からビジネスをどう創る? PwCが説く「都市DX」の勘所:Weekly Memo(1/2 ページ)
都市のDX、ひいては社会そのもののDXともいえる「スマートシティ」は、果たしてビジネスモデルとして成り立つのか。PwCアドバイザリーの解説をもとに考察したい。
社会課題の解決にデジタル技術を活用する「スマートシティ」の取り組みが国内外で本格化している。ただ、気になるのはビジネスモデルとして成り立つかどうかだ。今回は、PwC JapanグループのPwCアドバイザリーが2021年1月21日に実施したオンライン記者説明会での図解を基に、この点について考察したい。
まずは、スマートシティ市場の現状を見てみよう。スマートシティの定義については、国土交通省が「都市の抱える諸問題に対して、ICT等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理運営等)が行われ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区」と表現している。
ビジネスの「市場」として捉えたスマートシティとは
スマートシティをビジネスの「市場」として捉えると、図1のように複数の軸で分類できる。これらの組み合わせによって、多種多様なスマートシティが存在することが分かる。つまり、市場も多岐にわたるということだ。
図2は、スマートシティ市場の背景や機会、メカニズムを描いたものだ。最大の特徴は、従来のフィジカル領域の産業と、デジタル領域の産業が入り交じる市場である点だ。市場のメカニズムをドライブするマクロトレンドも、図に示すように「増大する都市開発需要」をもたらす要素と、「市場への参入激化」をもたらす要素が交差する。しかも国内だけでなく海外市場に向けた展開も広がっている。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大も影響して、スマートシティには一段と「レジリエンス」(自律的復元力)が求められている。自然災害やパンデミック(感染症の世界的流行)など、今後いかなる危機や脅威に遭遇しても機能を保てるレジリエンスを備えた都市を構築するためのイノベーションに、投資家を含めた世界的な関心が集まっている。
レジリエンスをはじめ、図2に記されている「持続可能な開発目標」(SDGs)を目指した取り組みから、スマートシティも、ハード面だけでなくサービス&マネジメントといったソフトの要素も合わせて、図3に示すように全てのレイヤーが統合された「サステナブル・スマートシティ」であることが求められる。
PwCアドバイザーの石井亮氏(ディレクター)は、このサステナブル・スマートシティについて「実現に向けては、異なる産業同士の分野横断的な連携がカギとなる。その競争力を強化するためには、都市データを活用したサービス&マネジメントが重要となる」と強調した。
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