“使うと高いデータベース”からの脱却なるか 開発から運用まで最適化、Oracle Database 21cの中身は:クラウドのニーズに特化も(1/2 ページ)
DXに向けてクラウドの普及や迅速なアプリ開発のニーズが高まる中、データベースの主要な機能を統合、自動化し、開発から運用管理まで効率化、迅速化するとされるのがOracle Databaseの最新版「Oracle Database 21c」だ。クラウドネイティブな利用にも特化し、コストを最適化するという機能は一体どのようなものか。
情報の検索や地図情報の把握、ネットショッピング、メッセージのやりとり――これらの目的をたった1台のデバイスで解決したスマートフォンは、複数の機器を使ったり持ち歩いたりする不便さを解消し、人びとの生活を大きく変えた。OSのバックアップやアップデータも自動化可能になり、メンテナンスの効率も上がった。
開発や運用で使うデータベースの世界にも「同じ変革を起こす」(日本オラクル 執行役 社長 三澤智光氏)と主張するのがOracleだ。同社は2021年1月、最新版データベース「Oracle Database 21c」を発表した。現在は同社のクラウド「Oracle Cloud」で提供し、今後は順次オンプレミス環境向けにも提供するという。
「データの世界においては、構造化データに加えて非構造化データが登場したことが(技術的なニーズにおける)変化のきっかけだったと思う。多様なデータを扱うための技術が出てきたことで、運用や管理に課題も見えてきた」と、三澤氏は話す。
「企業情報システムの中で目的別に複数のファイルシステムやデータベースを扱うようになったため、それぞれの開発環境や運用手法、リソースの違いに合わせた(操作の)必要性が不便さにつながった。そのような環境を動かすには多数の技術者が必要だが、一般的な組織の現実には合わない」(三澤氏)
日本オラクルが2021年2月12日にOracle Database 21cについての記者説明会を開催した際、「思い入れの強い製品。直接話がしたかった」として、Oracle Databaseをバージョン6から知る三澤氏が登壇した。多様な開発言語に対応し、運用自動化の機能も強化したOracle Database 21cは、具体的にどのような仕組みを提供するというのか。
言語と開発、運用環境の乱立をどう防ぐ? 「コンバージド」「自律化」の意図
Oracle Database 21cを支える概念が「コンバージドデータベース」だ。
これは、多数のファイルシステムを統合して巨大にするのではなく、目的に応じた小型のデータベースやファイルシステムを提供し、シームレスに連携させることを意味する。これにより、多様な開発のニーズに応える。同時にアップデートやバックアップ、容量整理や性能管理といったメンテナンス機能も自動化し、一元的に実行することで、運用管理の負担を軽減できるという。
「現在、消費者はさまざまなデジタル機器から企業のデータにアクセスする。(企業には)目的に応じたファイルシステムが乱立し、フロントオフィスとバックオフィスがばらばらにデータを持つ。その上で経営陣も細分化したデータを集めて洞察を得ているのが現実ではないかと考えている」(三澤氏)
企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)に向けたデータ活用のニーズが高まる中、三澤氏が取り上げた課題は「データを扱う上で、矛盾しがちな業務部門やIT部門の要求をいかに実現するか」だ。
「例えば、フロントオフィスが売り上げを改善するためにCX(顧客体験)を最適化したければ、IT部門はさまざまなデータを効率的に扱う必要がある。一方、バックオフィス側がTCO(総保有コスト)を最適化し、データから洞察を得たいとすれば、IT部門は基盤を効率化し、AI(人工知能)を導入しようと考える。こうした要求を実現し切ることが、DXにつながると考えている」(三澤氏)
コンバージドデータベース「4つのポイント」は
データ活用や柔軟なアプリケーション開発の促進、運用管理の効率化といったニーズにどうやって応えるのか。Oracle Database 21cがコンバージドデータベースとして提供する主要な機能は次の4つだ。
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