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カゴメのDXチームはなぜ本気で「野菜あるある」発見に挑むのか IT人材不足組織の内製化の方法論(1/2 ページ)

「IT人材をそこまで抱えていない組織」がDX推進や内製化を進め、次のアイデアを生み出し、育てられる組織に変わるには? カゴメのDXチームによるDX推進の経験則と4つのポイントを聞く。

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カゴメアクシス 業務改革推進部 DXグループ 村田智啓氏

 カゴメは蟹江一太郎氏が1899年に始めた西洋野菜栽培をルーツに、トマトソースの製造などを展開、1963年に現在の企業名になってからも、トマトを軸に事業を展開してきた。現在もトマトケチャップの国内シェア60.9%を誇り※1、約7500種ものトマトの遺伝資源を保有する。「トマトの会社」のイメージが強い同社だが、実は2025年までにトマトだけではなく「野菜の会社」へと生まれ変わるための変革を進めているという。その動機は、日本人の野菜不足解消ニーズに応えて社会に貢献しながら成長を果たすことにある。

※1 インテージSRI調べ(2019年1〜12月/金額ベース、対象エリア:全国、対象業態:スーパーマーケット、コンビニエンスストア)。


 カゴメのDXを主導するカゴメアクシス 業務改革推進部 DXグループの村田智啓氏は「この10年間、1日の必要な野菜接種量350gに対して日本人は290gほど。この野菜不足の状況を改善するため、野菜の会社を目指し、健康寿命の延伸に貢献します」と、この事業目標にかける思いを語る。

※本稿は「AWS Summit Online 2021」における村田氏の講演を基に編集部で内容を再構成したものです。


ERP刷新、業務環境改善は当たり前、成長を目指すDXは別軸で推進

 野菜の会社を目指すためになぜDXが必要なのだろうか。

 トマトの会社としての確固たるポジションを維持する状況は前述の通りだが、国内人口の減少が予測される中で事業を成長させるには、より広い顧客にリーチする手段が必要だ。ここで顧客拡大のきっかけが「野菜」であり、その野菜や野菜への市場ニーズを徹底的に理解するために必要なのがデジタル技術なのだという。

 とはいえ、歴史ある同社がDXを目指すに当たって、先に対処しなければならなかったのがレガシーシステムの更改だ。

 カゴメは2016年からレガシーシステムの更改を開始した。基幹システムを刷新し、1000以上もあったERPアドオンを9割削減した他、SaaSなどに業務アプリケーションを移行し、同時にテレワーク勤務制度やサテライトオフィスの導入など人事制度改革と両輪の改革も進めた。だがこれらの取り組みはあくまでも同社の真の目的であるDX推進のための下準備に過ぎない。

 「当社が考えるDXは、デジタル技術やデータを使って既存の概念に捕らわれない新たなビジネスモデルを構築し、人々の暮らしをより良いものに変革することにある」(村田氏)

 そこで、同社は「守りのDX」に一定の手応えを感じた段階で本来目指していた「カゴメのDX」を実現する施策を着手した。

トップダウン型DXに変革を求める従業員が呼応

 カゴメのDXはトップダウン型でスタートしたが、その背景には経営層の強い変革意識とDXへの期待があった。DX推進の機運をリードしたのが同社取締役専務執行役員の渡辺美衡氏だ。村田氏は、渡辺氏の次のコメントを紹介した。


カゴメ 取締役専務執行役員 渡辺美衡氏

 120年かけて築き上げたブランドとファンの皆さまを守るのは大切なことですが、そこだけに重心を置くと「世の中の最先端の流れに付いて行く力」、言い換えれば攻めの力が足りなくなってしまいます。守るのも大変な時代に、いままでと同じようにやっていたのでは守りも攻めも力が足りません。守りのレベルを上げつつ、攻める力も増やすためには、ITで私たちの働き方を変えて生産性を高め、もっとクリエイティブなこと(攻め)に時間を使う必要があります。DXがその突破口になれば理想的です


 こうした経営陣の思いがカゴメのDX推進のきっかけとなったが、「普段から『こうすればもっと良くなる』と話をしていた人たち、背中を押されるのを待っていた人たちが呼応してくれたからこそ」と渡辺氏はコメントを寄せた。

 これらを受け、村田氏はカゴメがつかんだ1つ目のDXポイントとして次の点を挙げた。

【カゴメのDXポイント1】「トップダウン」と「社内の意識」の掛け合わせが"DXの推進力"を生む

 DXは既製の概念に縛られずに新しいものをつくり上げるため、先が見通しにくく、不確実性やリスクを伴う。このチャレンジにトップダウンの後押しがあることで、従業員の「変わりたい」「変えたい」という変革への強い思いを芽吹かせられる。

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