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古いDWHの三重苦「キャパ不足」「スピード不足」「鮮度不足」 アスクルが決めた乗り換え先は(1/2 ページ)

キャパシティ不足で新しいデータを入れられない、多重実行時に応答が遅れる、即日のデータを扱えない……。過去、うまくいっていたDWHの運用も、データ量が増えた現在の要求に対応させるのは困難が多い。だが、事業運営の判断に直結する重要なデータ分析基盤ともなれば、どこに移すかは大きな問題だ。アスクルの場合はどんな選択をしたか。

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 オフィス向けの通信販売を手掛けるアスクルは、2020年12月に「ASKUL WAY」としてパーパス(「仕事場と暮らしと地球の明日に『嬉しい』を届ける」)を定め、デジタルトランスフォーメーション(DX)を本格化すると同時に、積極的な情報発信も進めている。同社は現在、全社的なDX推進の一環として、自社サービス基盤の情報や経営基盤の情報を単独のプラットフォームで分析する新たなビッグデータ分析基盤の構築に取り組んでいる。本稿では、アスクルにおけるデータ分析基盤構築の詳細を紹介する。

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DXの取り組みは積極的に情報を公開している(アスクルのコーポレートサイトより)

150万トランザクションに即応できないDWHは「物流クライシス」に対応できない

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アスクル 児玉和寛氏

 従来のアスクルのデータ分析環境は、2013年からオンプレミスで稼働しているものだ。具体的には、B2B向けECサイトの「ASKUL(アスクル)」やB2C向けの「LOHACO(ロハコ)」、事業の中核である商品システムに加え、「SAP ERP」で構築された基幹システムなどから収集したデータをデータウェアハウス(DWH)に格納し、分析ツール(SAS)で分析していた。

 長年データ分析プラットフォームの構築に従事してきた経験から3年前にアスクルに加わった児玉和寛氏(デジタルエンタープライズ1部長)によれば、児玉氏が入社した3年前の時点でこのシステムは稼働から5年たっていたが、当時すでに数々の問題が起きていたとう。

古いDWHの3重苦「キャパ不足」「スピード不足」「鮮度不足」

 まずキャパシティーが圧倒的に不足していた。オンプレミスのSASとの組み合わせて使っていたデータウェアハウス(DWH)は、2017年ごろからすでにデータ使用率が上限いっぱいになっていたが、アプライアンス製品のため、拡張が困難で「データを新たに投入できないため、泣く泣く優先順位の低いデータを消したり、データの棚卸しを現場に依頼するなど、だましだまし使っている状況だった」(児玉氏)という。

 同社では特に、今後予想される「物流クライシス」(EC市場の拡大に伴う需要ひっ迫や人材不足などにより現在のサービス維持が困難になるとされる問題)に対応するため、物流データの分析が非常に重要なテーマだった。しかし膨大なボリュームになる物流データを既存の分析基盤に追加する余地は全くなかったという。

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