“データ多過ぎ”時代のIT戦略、変わるポイントは? サプライチェーンの場合:Supply Chain Dive
足りない知見を補いたい企業が“データ不足”に悩んでいた時代は終わり、今度は大量のデータをどうさばくか悩む時代が到来しつつある。データから望む知見を引き出し、同時に費用対効果も上げるために必要なポイントとは何だろうか? サプライチェーン管理の視点から考えてみよう。
データを使った予測分析は、実は新しい技術ではない。実際は米国の歴史よりも古いのだ。1689年の時点で、英国の保険企業Lloyd'sは予測分析を使った航海の保険引き受けを開始していた。
コンピュータが普及し、情報へのアクセスがより便利で速くなるにつれて、予測分析もより幅広い場面で利用されるようになった。
現代に当てはめると、それは「RFIDタグに似ていて、しばらく前から存在している」と、Rutgers Business Schoolのルドルフ・ロイシュナー氏(サプライチェーン管理担当 准教授)は語る。
「予測分析を支える実際のアルゴリズムを見ると、それほど目新しいものはない」(ロイシュナー氏)
変わったのは、データ量が膨大になったことと、そのデータの用途が広がったことだ。
「十分なデータがないことを嘆く人はもはやいない。むしろデータが多すぎることについて不満をもらしている」とロイシュナー氏は言う。
「ソフトウェア企業やテクノロジー企業は、ものすごい勢いで生成される大量のデータから価値ある知見を取り出し、活用することには成功している」(ロイシュナー氏)
サプライチェーンの予測分析はどこまで普及したのか 業界団体の調査結果は
北米で物流やサプライチェーンの情報を扱う業界団体のMHIは、年次調査レポート「2021 MHI Annual Industry Report―Innovation Driven Resilience(イノベーション主導のレジリエンス)」で、サプライチェーンにおけるイノベーション投資について、同社とDeloitteが全世界のサプライチェーンの専門家1000人以上を対象に調査した結果を発表した。回答者の31%が「予測分析を既に使っている」とし、48%が「今後5年間で使う予定」とした。
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