「えっ、データがない?」 ESG時代到来でCIOに求められる“新たな役割”:CIO Dive
ESG戦略への関心が高まっているが、多くの企業は、投資家だけでなく規制当局からも要求されるデータを作成するためのシステムを備えていない。データ作成の白羽の矢が立ったのは、かつて「技術に詳しければ務まる」とされていたCIOだった。
環境・社会・ガバナンス(ESG)戦略への関心が高まる中で、米国政府は気候変動リスク開示の標準化を進めており、CIO(最高情報責任者)の役割は変化しつつある。
CIOは“倫理的な後見人”になれるのか
リスク管理ソフトウェア会社であるAuditBoardのジョン・ホイーラー(John Wheeler)氏(リスクとテクノロジーに関するシニアアドバイザー)は「これまでCIOは技術的な視点を持っていれば何とかやってこれた。しかし、ESGの主要な推進要因の一つであるデジタル化によって、CIOが前面に押し出されるようになった。CIOは"倫理的な後見人"になることを迫られているが、これは彼らにとって困難なことだ」と話す。
2022年4月の第3週、米国証券取引委員会(SEC)が気候変動リスクに関する画期的な規則(注1)を提案して、この話題(の盛り上がり)は最高潮に達した。この規則が承認されれば、企業は温室効果ガス排出量を含む気候変動リスク(の要因とされる物質の排出量)を年次報告書やその他の提出書類で開示することが義務付けられる。
SECは「この規則案では登録者の事業や業績、財務状況に重要な影響を与える可能性がある気候関連リスクについての情報が求められる」と述べる。
気候変動管理・会計プラットフォームのPersefoniのティム・モヒン(Tim Mohin)氏(チーフ・サステナビリティ・オフィサー)は、「現在ほとんどの企業が何らかのデータを開示しているが、これは自発的なものだ」と話す。モヒン氏は以前、国際的なサステナビリティ報告基準を策定するGRI(Global Reporting Initiative)を率いていた。
CFO(最高財務責任者)は通常、SECの開示コンプライアンス業務を監督しているが、モヒン氏は「『炭素はデータの問題』だから、CIOが関与するようになってきている」と指摘する。
「電気を買うのも車を走らせるのも会社で出張を決めるのも、全ては炭素(排出量)に影響する。全てのCIOはこのメッセージを聞くべきだ」(モヒン氏)
「E(環境)だけでなくS(社会)も測れ」
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