余剰倉庫でピンチのAmazon “最強”配送ネットワークを生かす逆転の一手とは:Supply Chain Dive
Eコマース需要の高まりに応えるべく倉庫を拡張したAmazon。2022年に余剰の倉庫容量に悩まされるようになった同社は、倉庫容量を“逆手”にとった新サービスを発表した。「最も多くの小包を運ぶ」といわれる同社の挽回の一手となるか。
Amazonは2022年8月31日に公開した公式ブログ(注1)で、(Amazonマーケットプレースの)サードパーティーの出品者が長期在庫保管のために同社の配送センターを利用できる新サービスを開始すると発表した。
「Amazon Warehousing & Distribution(AWD)を通じて出品者はAmazonの新しい施設を大容量の保管と自動配送のために利用することができる」と、Amazon Distribution and Fulfillment Solutionsのゴパル・ピライ氏(バイスプレジデント)は投稿した。
AWDは、(商品の受注から梱包、発送、返品対応までをAmazonが代行する)「Fulfillment by Amazon」を現在利用している出品者が利用できるサービスだ。2023年には卸売顧客や実店舗を含むあらゆる場所に在庫を送れるよう拡張される。
Shopifyなどライバルを尻目に繰り出す新サービス
出品者にとって、この新サービスの利点は何だろうか。
在庫を配送センターに保管することによって、Amazonのフルフィルメントネットワークにある在庫を「シームレスに補充することが可能になる」とピライ氏は言う。世界中にある在庫を「Amazon Seller Central」で一元管理することも可能だ。
AmazonはAWDを通じて、フルフィルメントネットワークからより多くの価値を獲得できるようになる。Amazonは2021年に電子商取引(Eコマース)需要の高まりに対応するために倉庫を積極的に拡張したが、2022年は容量の余剰に悩まされている。同時に、他の企業も安全在庫を強化し、支出増に対応するため、高値でより多くの米国内の倉庫用不動産を確保しようと躍起になっている。
出品者は、保管業務をAmazonのフルフィルメントネットワークに統合することによって「必要な商品を適切な場所と時間に確実に配置し、コストを削減できる」とピライ氏は述べた。
「このシンプルな従量課金制サービスによって、出品者は在庫を上流施設からAmazonフルフィルメントセンターに移動するという、時間のかかる面倒なプロセスから解放される」(ピライ氏)
新サービスの発表は「ShopifyやAmerican Eagle、Maerskといった競合他社がサプライチェーンのさまざまな側面でAmazonに踵(きびす)を返す中で行われた」と、Eコマース専門にコンサルティングを手掛けるCommerce Consultingの創設者であるリック・ワトソンCEOは「LinkedIn」に投稿(注2)した。
「これで、この分野の“部屋”から酸素がいくらか除去される」とワトソン氏は言う。「現時点で、Amazonほど多くの小包を運ぶ企業はない。Amazonはボリュームと多大な投資を活用して、現状に甘んじることなくリードを広げ続けている」(ワトソン氏)
Amazonは、自社のネットワークにすでに流れている大量の荷物を活用して、1平方フィート(約0.09平方メートル)当たりのコストを下げるため、「競合他社よりも保管料が低くなる可能性が高い」とワトソン氏は付け加えた。
ピライ氏によると、Amazonは2022年9月14〜15日に開催される同社の年次出品者会議「Amazon Accelerate」で、AWDに関する詳細な情報を共有する。
関連記事
- Amazonが配送ルートアルゴリズムを展開 走行距離の削減は実現するか
配送ルートアルゴリズムの導入でこれまでの配送サービスはどう変化するのか。 - 金融機関向けフルクラウド型コールセンター インテックがAmazon Connectと連携したサービス提供へ
インテックは、Amazon Connectと連携したクラウド型「F3コールセンターサービス」を提供すると発表した。拠点に依存しない柔軟なコールセンター設計を可能にし、AIの活用によってリアルタイムで顧客の感情や傾向を把握できるとしている。 - なぜ「Amazon Prime」の顧客体験が好評なのか――AWSジャパン社長の話から解き明かす
Amazon Primeの迅速な商品配送による「顧客体験」が多くの利用者に好評なのはなぜか。AWSジャパン社長の年次イベントでのスピーチから解き明かしたい。 - Gapが「物流企業」に 小売業界で顧客サービスの垂直統合が本格化
SPA(製造小売)ビジネスの経験が厚いアパレル企業にとって、流通最適化はお手のものだ。自社物流網を持つ企業が垂直統合のメリットを最大化させつつある。自社サービスの高度化はもちろんだが、究極の配送網を商売のタネにしようという動きが米国で盛り上がりを見せている。今やアパレルメーカーのGapすら物流企業なのだ。
© Industry Dive. All rights reserved.