山善、財務経理部を「二度手間」から解放するDXを推進
山善は、新たな財務経理基盤として「BlackLine」を導入し、人的資本の強化や企業価値向上を支える財務経理業務のDXを推進する。「SAP S/4HANA」との自動連携も進める。
工作機械や住宅設備機器を扱う専門商社の山善は、人財マネジメント戦略とデジタル融合戦略を推進する財務経理部の業務基盤としてクラウド型決算プラットフォーム「BlackLine」を導入した。ブラックラインが2022年10月13日に発表した。
BlackLineで実現した財務経理部の業務基盤
BlackLineは経理・決算業務プロセスの可視化や標準化、自動化、統制強化を実現し、業務変革を支援する統合プラットフォームだ。既存の会計システムなどでカバーされない手作業をデジタル化し、決算プロセス全体の効率化を支援する。
山善は工作機械や産業機器、機械工具などの生産財と、住宅設備機器、家庭機器などの消費財という他分野を取り扱う専門商社だ。生産現場の自動化提案や脱炭素社会へ向けた省エネ事業の推進、生活者のニーズを具現化した商品の開発などを手掛ける。
同社は「2030年の世界観」を見据えた重要課題の一つとして「働きがいのある職場の実現」への取り組みを推進し、人的資本の強化や企業価値向上を図っている。特に財務経理部は持続的な企業価値向上を支えるために高付加価値のアウトプットが求められる中、経理人材の流動性の高まりなども影響し、生産性向上と人財の確保・育成に直結する働きがいのある職場の実現が大きな課題になっていた。
同社は、グローバルの経営基盤としてSAPのクラウドERP「SAP S/4HANA」の採用を決めていたが、国産ERPと自社開発したオペレーションツールの組み合せによる既存システムからグローバルスタンダードへの移行を円滑にし、効率性と内部統制の維持、向上を両立させるためにERPを補完するソリューションが必要だった。
決算業務の可視化と標準化を実現
同社はこれらの課題に対処するため、BlackLineの導入を2021年12月に決定した。SAP S/4HANAの導入プロジェクトがすでにスタートし、社内リソースに制限がある中で、2022年1月から、まずフェーズ1としてタスク管理と勘定照合の2つのモジュールを導入して「決算業務の可視化と標準化」に着手し、2022年3月の年度末決算までの3カ月というタイトなスケジュールでの本番稼働を成功させた。
決算業務の可視化と標準化の狙いは次の通りだ。
- 個人のスキルやナレッジに依存しすぎない仕事の進め方と情報共有、ならびにコミュニケーションプロセスの確立
- 人を作業や二度手間から解放し、思考や判断、創造的業務へリソースシフトさせるための業務基盤の整備(自動化の地ならし)
- 働く場所にとらわれない柔軟な働き方を実現
- 上記全てを実現する中での決算品質、内部統制の担保
- 決算以外の業務での上記目的の達成に向けた経験とナレッジの蓄積
S/4 HANAとの自動連携と自動化領域の拡大
既存システムとの組み合せによる決算業務の可視化と標準化が目的だったフェーズ1に続き、2022年9月にフェーズ2として稼働後の「SAP S/4HANAとの自動連携」と、導入モジュールの拡張による「決算業務の自動化の拡大」に着手し、2023年3月をめどに開発を進めている。
山善の経営管理本部 財務経理部長 井上定知氏は同社の新たな基幹システムとなるS/4 HANA導入について「財務経理領域については、SaaS型ERPフロントソリューション、RPAとBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)を組み合わせた堅牢性と柔軟性を兼ね備えた業務体制の構築を目指した。特にERPフロントについては、ニッチトップと評されるサービスを選定することで資金管理や固定資産、経費精算といったニッチ領域における最適解を見いだせたものと考えている」とコメントした。
一方で同氏は「これだけでは『Microsoft Access』『Microsoft Excel』などを駆使した従来業務がSaaSに置き換わっただけで、いまひとつ前進した感が得られなかった。依然としてファイルサーバのファイルを探す、更新する、保存するといった従前通りの業務が生き残っていた」と言う。
この解決策として導入に至ったのが、BlackLineだ。「BlackLineは、世界中の経理パーソンが積み上げてきたノウハウと業務プロセスが有機的に一つの世界を形成しており、ERPフロントとしての機能だけでなくプラットフォームとしても利用価値が高いサービス」(井上氏)と判断したという。
山善は今後の展開として、営業債権の入金消込や在庫管理システムと会計残高の照合、グループ会社への展開など、組織や法人の枠にとらわれずに財務会計に関連するプロセス全般にBlackLineを適用することで、グループ全体としての経理DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する方針だ。
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