シスコ「旧態依然のインフラ」からの脱却を提案 “やわらかいインフラ”とは何か:Weekly Memo(1/2 ページ)
シスコが新たなITインフラの在り方として「やわらかいインフラ」を提案した。どのような内容か。ITサービス業界にどんなインパクトをもたらすか。筆者なりに考察したい。
「シスコは新たなITインフラの在り方として『やわらかいインフラ』を提案したい」
シスコシステムズ(以下、シスコ)の中川いち朗氏(社長)は、同社が2022年10月19日に開いた今後の事業戦略についての記者説明会でこう強調した。
「やわらかいインフラ」とは何か。これまでITインフラ事業の主体となってきたITサービス業界にどんなインパクトをもたらすか。同社の説明を聞くと、やわらかいインフラとはどうやらDX(デジタルトランスフォーメーション)と深い関係があるようだ。筆者なりに考察したい。
経営環境の変化に合わせてITインフラも動的に変化
シスコが提案したやわらかいインフラの全体像は以下の通りだ(図1)。
「クラウド時代のDXプラットフォーム」(図1下)には、シスコが定義するDXの基本条件となるソリューションが4つ、記号で示されている。左から「アプリケーションの再構築」「ハイブリッドワークの具現化」「企業全体のセキュリティ」「インフラの変革」だ。
やわらかいインフラはこれらをベースに、「ネットワーク」「セキュリティ」「最適化」「自動化」「監視」といった機能を提供し、「経営環境の変化に合わせてITインフラも動的に変化させて柔軟に運用できるようにする」(中川氏)ものだ。その結果、「ITインフラとして俊敏性や強じん性、生産性を向上させることができる」(同)という。
具体的な説明に入る前に、シスコがなぜ今、やわらかいインフラを提案したのか、その背景を見ておこう。中川氏に続いて説明に立った同社の望月敬介氏(副社長 カスタマーエクスペリエンス担当)が、次のように述べた。
「スイスのビジネススクールIMDによるグローバルでのデジタル競争力の調査(2022年版)で、日本は29位と先進国で最低レベルだった。中でも大きな足かせとなった要因に人材・スキルの不足、規制の枠組みによる制約、ビジネスアジリティのなさの3つが挙がっている。とりわけビジネスアジリティの大きな足かせとなっているのが、旧来のインフラだ」
それを示したのが、シスコの独自調査で国内企業・団体1000社のITインフラの実態を明らかにした図2だ。「新たな開発環境の提供には数週間から数カ月かかる」および「クラウド基盤はすぐに提供できるが、ネットワークの設定は手動なので時間がかかる」の回答を合わせると、2021年、2022年とも5割前後を占めている。これについて望月氏は「DXなど成り立たない」とコメントした。
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