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「5年後、メタバースはビジネスの主流になる」――NTTデータの見解を支える“2つのカギ”Weekly Memo(2/2 ページ)

バズワードになり巨額の投資が集まる一方で、世の中にどのようなインパクトを与えるのかは未知数なメタバース。ビジネスやワークスタイルにメタバースがどんなインパクトをもたらすのか、NTTデータの見解から探ってみたい。

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テレワークの延長線上にあるメタバースの利用

 XRデバイスがワークツール、さらには汎用的なコンピューティングデバイスになっていくとはどういうことか。コンピューティングデバイスの観点から考えてみると、実はこの分野はかなり成熟してきていることが浮かび上がってくる。

 山田氏はこの点について次のように説明した(図3)。


図3 コンピューティングデバイスが目指してきたもの(出典:NTTデータの記者説明会での資料)

 「コンピューティングデバイスはこれまで、モビリティと広い画面による没入感が追求されてきた。デスクトップPC(パーソナルコンピュータ)を起点にすると、モビリティに向けてはノートPC、タブレットやスマートフォン、スマートウォッチと進化したが、画面は小さくなっていった。一方、没入感に向けては複数画面を使うようになったが、モビリティとは懸け離れていった。つまり、モビリティと没入感はトレードオフの関係にある」

 その上で、同氏は次のように続けた(図4)。


図4 モビリティと没入感を両立させた新たなXRデバイスへ(出典:NTTデータの記者説明会での資料)

 「このトレードオフを解消できる唯一のデバイスがXRだといわれている。VRヘッドセットを装着すれば、いつでもどこでも快適な環境で仕事ができるようになる。スマートグラスの開発が進めば、モビリティ度合いが高まる。いずれはこれら両方から進化し、モビリティと没入感を両立させた新たなXRグラスが登場するだろう」

 こうした動きによって、何が起きようとしているのか。山田氏はインタフェースの変遷に着目した。かつてのホストコンピュータではキャラクターユーザーインタフェース、PCではグラフィカルユーザーインタフェース、スマホやタブレットではタッチインタフェースが使われてきた。それがXRデバイスでは没入型インタフェースになる(図5)。「没入型インタフェースで作られるアプリケーションがメタバースを構成するものになる」と同氏は言う。


図5 コンピューティングにおけるインタフェースの変遷(出典:NTTデータの記者説明会での資料)

 「メタバースではアプリケーションの形や使い方が変わるだろう。これまでのPCは、アプリケーションを使って作成したドキュメントなどはファイルに格納して整理してきた。没入型インタフェースによって動くアプリケーションはメタバースの構成要素となり、アバターとなったユーザーが没入型インタフェースによってメタバース上で仕事をし、外部とのやりとりによってビジネスを行い、さらにはスーパーやコンビニで買い物もできるようになる。(リアルな)モノのやりとりについては、ロボットなどで自動化された物流の仕組みによって手元に届くようになる」(山田氏)

 さらに同氏は「XRデバイスを使ったメタバースはコンピューティングとコミュニケーションの在り方をガラリと変える可能性がある」強調し、「だからこそ、1000兆円近い市場規模やMetaによる年間1兆円投資の話が出てくるのだろう」との見方を示した。

 こうなると、デジタル化されたビジネスは全てメタバースでやりとりされるようになり、それに伴ってワークスタイルもメタバースが中心になっていくだろう。


NTTデータの山田達司氏(技術開発本部イノベーションセンタ シニア・スペシャリスト)

 説明会終了後、個別取材に応じた山田氏は、XRデバイスによるメタバースでのワークスタイルについて「コロナ禍で多くの人が経験したテレワークの延長線上と考えればイメージできるのでは」と、そんなに大げさに考えることはないとの見解を示した。

 筆者はメタバースがビジネスやワークスタイルの主流になる時代が到来するとしても、XRデバイスがスマホ並みに普及する必要性を考えれば、早くても約20年先になるのではと考えていた。しかし、山田氏は冒頭の発言のように「早ければ5年後」と明言した。

 同氏は最後にこう話した。「若い人たちは、日々の生活の中ですでにスマホやタブレットで仮想空間にいる時間のほうが長い。そう考えると、XRデバイスおよびメタバースは加速度をつけて進化していく。それがひいては社会の在りようを変えていくだろう」

 こうした動きに対応していくためにも、企業はまずDX(デジタルトランスフォーメーション)に注力する必要がある。山田氏の話を聞いてつくづくそう感じた。

著者紹介:ジャーナリスト 松岡 功

フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。

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