富士通、川崎重工業、SAPらが協業 製造業のDXを支援する「サブスクサービス」とは?
富士通、川崎重工業、SAPジャパン、Skillnoteの4社は、製造業のDXを支援するための協業を開始する。人による作業への依存度が特に高い航空機や鉄道などの製造業のDXをどのように支援するのか。4社の役割分担とは。
富士通、川崎重工業、SAPジャパン、Skillnoteの4社は2022年11月22日、製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援するプラットフォームの提供について検討を開始したと発表した。同プラットフォームは、製造業の中でも航空機や鉄道、船舶、大型機械といった人による作業への依存度が高い領域を対象にする。
サブスクで利用可能な製造業プラットフォームとは?
同プラットフォームは、DXやシステム構築、エンジニアリングに関する4社の経験やノウハウを活用して、サプライチェーンを強化する「みんなで育てる製造業プラットフォームサービス」をうたい、サブスクリプション形式での提供を検討している。
近年、製造業では労働人口の減少によって、事業継続の仕組みづくりや技術の標準化の必要性がサプライチェーン全体で高まっている。製造現場の製造管理業務はデジタル化されておらず、多くの作業を人手に頼っていることが課題となっている。
特に中小企業では、人材不足や投資対効果の算出が難しいことなどから、DX化が進んでいないのが実情だ。デジタル化が局所的に進むことで、サプライチェーンやエンジニアリングチェーンにといった全体最適を阻むサイロ化の発生も懸念されている。
みんなで育てる製造業プラットフォームサービスは、製造業の課題を解決して、共通化したデータや情報を使って「ものづくり」を支援するサービスだ。
川崎重工の航空宇宙システムカンパニーが航空機の製造プロセスを標準化した「Smart-Kプロジェクト」の業務プロセスを汎用化し、サブスクリプションサービスとして製造業のサプライチェーンに向けて提供する。
Smart-Kプロジェクトは、富士通やSAPジャパンとともに、「SAP S/4HANA Manufacturing for Production Engineering and Operations(PEO)」を導入することでデジタル化した。
エンジニアリングチェーンとサプライチェーンがワンストップでつながるよう、PEOによって製造現場をERP(Enterprise Resource Planning)やPLM(Product Lifecycle Management)と連携させる。4社は、技術要求の厳格なフローダウンと製造現場の状況をリアルタイムで把握できるとしている。
みんなで育てる製造業プラットフォームサービスは、ユーザー主体でシステムを導入できるよう、富士通のシステム導入に関するノウハウやコンテンツをサービスとして提供する。ユーザー企業の主体的な業務変革とシステム運用の継続的な改善に向けて、DXスキルの向上を支援するとしている。
システムの導入に当たっては、最近、「Fit to Standard」(注1)の取り組みが進んでいる。標準機能に業務を合わせることはDXを推進するに当たって効果的な考え方とされるが、システムに対する改善要望が反映されないというデメリットもあった。
そこで、今回のシステム導入に当たってはシステムに対するユーザーの改善要望や開発優先順位を共有して「Standard」を育てることを目指す。業務上必要なマスターデータの作成支援など、エンジニアリングサービスを提供することでプラットフォームの利用価値を高める狙いだ。
プラットフォーム上のデータ活用と各種SaaS(Software as a Service)との連携にも取り組む。Skillnoteは、製造現場のスキル管理や資格管理、教育計画などを通じて、技能伝承などの人材を育成するサービスをSaaSとして提供する。
4社は今後、プラットフォームサービスの構築や、ユーザー企業と各種団体へのヒアリングを基に周辺の支援サービスをメニュー化し、2023年度上期にかけて航空機エンジンの部品製造などを手掛けるAeroedgeを皮切りに数社でテストを実施する。その後、2023年7月のサービスインに向けて活動する計画だ。
(注1)ERPを導入する際、アドオン開発を追加で行わずに業務内容をERPの標準機能に合わせていく手法。
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