2030年の技術トレンドを調査から読み解く――JEITA会長会見:Weekly Memo(1/2 ページ)
これからどのようなデジタル技術がどんな分野にイノベーションをもたらすのか。2030年の社会はどう変わるのか。JEITAがその指標として示した調査レポートから探ってみたい。
「コロナ禍を経て、テレワークは急速に定着し、デジタル化やクラウド利用の進展によりデータ流通量は爆発的に増大した。国際的かつ大規模なデータ流通では、信頼性のある自由が望まれている。一方、持続可能な社会の実現に向けては、世界各国が掲げるカーボンニュートラルをはじめさまざまな社会課題を解決する必要に迫られており、革新的かつ効率的に課題を解決するため、先端テクノロジーの活用によるデジタルイノベーションが求められている」
電子情報技術産業協会(JEITA)は「社会のデジタルイノベーション」をテーマにした「注目分野に関する動向調査」レポートをまとめ、同協会が2022年12月15日に開いた時田隆仁氏(富士通社長)による会長会見で発表した。上記はレポートの冒頭部分だ。同調査は、主要国の政策や海外先進企業の動向など公開情報を分析し、国内先進企業へのヒアリングを基に推計したものだという。このレポートの内容が示唆に富んでいたので考察してみたい。
JEITAが注目する応用テクノロジー3要素とは
同調査は、各国政府の戦略などを基に影響が大きなテクノロジー要素として「Web3.0/ブロックチェーン」「量子コンピューティング」「メタバース」「クラウド/エッジコンピューティング」「5G/Beyond5G(6G)」「AI・データ解析」「サイバーセキュリティ」の7つを抽出し、それぞれの技術が社会実装される場面を想定して市場規模を推定した。
その結果、2030年のデジタルイノベーション市場は、世界で2兆3525億ドル(対2021年比で年平均13.1%増)、日本で14兆3000億円(同14.9%増)に達する見通しだ(図1)。なお、為替レートは、2021年を1ドル=109.5円、2022年以降を1ドル=128.6円で計算した。2022年は2022年1〜10月の単純平均レートを使用、2023年以降の為替は2022年と同一と見なしている。
2030年におけるデジタルイノベーション市場のうち、応用テクノロジーは3609億ドル、ベーステクノロジーは1兆9917億ドルとなる見通しだ。応用テクノロジーの内訳は、規模の大きい順に「メタバース」1866億ドル(対2021年比で年平均16.9%増)、「Web3.0/ブロックチェーン」1136億ドル(同42.0%増)、「量子コンピューティング」607億ドル(同28.4%増)とのことだ(図2)。
JEITAはこの応用テクノロジー3要素に注目しており、「今後、大きく伸びる分野だ。日本でも産官学を挙げて注力している。特にメタバースは日本が得意とするコンテンツを生かせるだけにポテンシャルは大きい」(時田氏)と期待を膨らませている。
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