ノーコード開発ツール「kintone」ヒットの理由――サイボウズ青野社長は何を語ったか:Weekly Memo(1/2 ページ)
企業がDXを進めるためのテクノロジーとして、事業部門の担当者が利用しやすいノーコード開発ツールが注目されている。中でも普及に勢いがついてきているのが、サイボウズの「kintone」だ。多くのユーザーに受け入れられる理由について、同社の青野社長は何を語ったか。
「kintoneはツールだけではなく、ビジネスモデルの総称だ」
サイボウズ社長の青野慶久氏は、同社が2023年2月22日にオンラインで開いた2022年12月期決算に伴う事業説明会でこう強調した。kintoneは「チームワークあふれる社会を創る」をパーパスに掲げる同社が注力するPaaS(Platform as a Service)型クラウドサービスで、プログラミングの知識がなくても業務アプリケーションを構築できるノーコード開発ツールとして、ここにきて一段と普及拡大している印象だ(写真1)。
ヒットの理由は「kintoneならではのビジネスモデル」
kintoneが多くのユーザーに受け入れられる理由は何か。それは青野氏の冒頭の発言に集約されている。そして、その理由はユーザーサイドから見てもノーコード開発のようなDX(デジタルトランスフォーメーション)支援ツールを選ぶ際の大きなポイントになりそうだ。以下、同氏の会見での説明から探っていこう。
まずは、kintoneの最新状況について見ていこう。図1に示すように、売上高は2022年で100億円を超え、前年比30%超の伸びとなった。青野氏は、「単一のツールで100億円規模の売り上げがある国産のクラウドサービスはそんなに聞かないので、国内ではそれなりの存在になってきたのではないかと自負している」と胸を張った。
図2は、kintoneユーザーの導入状況を示している。国内契約社数は2022年末時点で2万7500社だ。2022年は月平均550社が導入し、企業の規模や業種に偏りはないという。kintoneの大きな特徴が「導入担当者の93%を非IT部門が占める」ことだ。非IT部門とは、すなわち事業部門のことだ。
kintoneがこのようにさまざまなユーザーに受け入れられる理由として、青野氏は「kintoneならではのビジネスモデル」を挙げた。その内容を端的に描いたのが、図3だ。この図を示しながら、青野氏は次のように説明した。
「kintoneは、プログラミングしなくても使い方を覚えてもらえればさまざまなアプリケーションを容易に作成できる。テレビCMではこの部分を強調したが、実際にはノーコードでアプリケーションを作ると、『もっとこんな機能がほしい』『別のシステムとつなぎたい』といったようにやりたいことがどんどん出てくる。kintoneは拡張性に富んでいることから、昔の家庭用テレビゲーム機にカセットを指すように機能モジュールをプラグインしたり、パートナー企業との協業によってさまざまな外部サービスと連携したりできる」
「また、事業部門の担当者の方々にkintoneの使い方を覚えてもらうために、パートナー企業による支援やユーザーコミュニティーを通じたリスキリングに取り組んでもらう必要がある。このため、設けたりユーザーの業種業態に応じたコミュニティーを作ったり、きめ細かな対応に努めている。そうした活動を通じて、ユーザーであるお客さま自身の手によってDXの内製化を進められる」
その上で、青野氏が強調したのが「kintoneは単なるツールにとどまらず、ビジネスモデル全体を指す」という冒頭の発言だ。
実は、同氏はこのkintoneのビジネスモデルについて、図3を最新状況の前と全体の最後に2回掲げて最も時間をかけて説明した。今回の会見で同氏が一番訴えたかったことなのだろう。
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