日清食品グループはいかに「デジタルを武装」したか 改善点を洗い出す、現場主導の組織づくり:DX Summit14 レポート(2/2 ページ)
日清食品グループは、徹底的に改善点を洗い出してデジタル化を推進することで、年間10万時間にあたる業務工数を削減した。現場主導の組織づくりについて具体的な手法を紹介する。
アイデア創出ブレストを活性化させるルール設定
ランク1の活動の要素として重要視するのが「アイデア創出ブレスト」だ。参加者が改善候補業務に関する不満や要望などを自由に発言して、参加者全員で発想をふくらませるのが目的だ。そのために次のようなルールを設けた。
- 制約事項なしで自由に発言すること:技術的に難しい、社内で通らないといった思惑は一切なしで自由に発言する
- 質より量を目指す:いいことを言おうとすると発言がなくなるので、思い付いたことをどんどん発言し、より多くの発言を心掛ける
- 他者の発言を褒める:他者の発言は褒める、のる、否定しない(否定されると発言者が萎縮し発言できなくなるため)
- ゲーム感覚で楽しく行う:会議の進行役であるファシリテーターと参加者全員が協力して楽しい雰囲気を作ることで、参加者の本音を引き出す
- 事前に発言内容を考えておく:当日いきなり実施するブレストでは発言が出てこないケースが多いため、参加者が事前に発言内容を考えておくことで、ブレストを活性化させる
他にも、「発言の順番を決めない」「上司が口火を切って議題や範囲を決めない」「業務内容に詳しい人に意見を委ねない」というルールがあり、共感を大切にしながら遊び心を持って楽しく実施するとしている。
「ペルソナ」の設定で遊び感覚が強まり、新たな発想に結び付く
山本氏はブレストの効果をさらに向上させるための手段として「ペルソナ」の設定を挙げる。改善意識の高い人物像を設定し、ブレスト参加者がその人物=ペルソナになったつもりで発言する。
ペルソナは、名前や性別だけでなく年齢や住所、家族構成、ペット、職業、職歴、趣味、関心領域、情報源、性格、趣味・嗜好(しこう)、働き方などを詳細に設定し、事前にブレスト参加者に伝えておく。「参加者は、改善意識の高い人物の目線で現状の問題点を捉えられるようになる。また、属性が同じでありながらも微妙に異なるペルソナをそれぞれの参加者が想像するため、多様な視点からの発言を引き出せる」(山本氏)。営業部門で実施したところ、遊び感覚が強まることでブレストが盛り上がり、新たな発想に結び付いたという。
RPAやアプリ開発者の育成につながる施策 スキルマップ、ポータルサイト、社内資格試験
日清食品グループは、ここまで紹介した以外にも、現場部門のRPAやアプリ開発者に向けた教育的取り組みを実施している。
その一つがスキルマップの作成だ。RPAやローコード/ノーコード開発に必要なスキルを定義し、達成度合いによって初心者、初級者、中級者の3段階に区分する。「レベル別に教育プログラムを整備することで、IT知識に自信がない従業員でも、着実にスキルを身につけられる」(山本氏)
また、従業員が隙間時間に自習できるポータルサイトを構築して、教材やワンポイント動画、AI(人工知能)チャットbotによるQ&Aなどのコンテンツを整備した。「スキルは誰かに教えてもらうものではなく、自習でこそ伸びる」という基本的な考え方に基づいて、ポータルサイトのコンテンツを充実させていくという。
山本氏は今後について、「スキルを身に付けた従業員がチャレンジする社内資格試験を設け、合格者を有資格者として人材データベースに登録することで、開発者のモチベーション向上につなげていきたい」と語り、日清食品グループが中長期にわたって従業員のスキルアップを促進しつつ、業務改善やデジタル化に取り組む姿勢を示して講演を締めくくった。
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- ニチガスが模索する“Web3を見据えたビジネスモデル” 「レガシーシステムを捨てる勇気」が必要な理由(日本瓦斯 和田眞治会長)
(2023年3月17日初版公開、2023年3月21日第2版公開)
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