ChatGPTを「社内で安全」に使うには――Boxの取り組みから考察する:Weekly Memo(1/2 ページ)
「ChatGPT」に代表されるジェネレーティブAIを企業で効果的かつ安全に利用するにはどうすればよいか。業務アプリケーションでありコンテンツ管理ツールでもある「Box」を提供するBoxの取り組みから考察する。
今、話題沸騰の「ChatGPT」に代表されるジェネレーティブAI(人工知能)を企業で効果的に利用したいというニーズが高まっている。さまざまな業務アプリケーションでも使えるようにする動きも活発化している。
セキュリティやコンプライアンスの問題にどう対処する? Boxの取り組み
一方で、企業がジェネレーティブAIを利用する際のリスクとなっているのが、取り扱う情報におけるセキュリティやコンプライアンス、プライバシーといった安全性の問題だ。これに対処するため企業は、例えばChatGPTだと、この技術をクラウドサービスとして提供しているMicrosoftやそのパートナーであるITサービスベンダーと個別に契約し、社内で安全に使える仕組みを構築している。
そうした中、業務アプリケーションにおいてChatGPTの技術を使えるようにする動きとして、クラウドで企業内のコンテンツ管理を行うサービスを提供する米Boxが2023年5月2日に発表した「Box AI」について、日本法人のBox Japanが同18日に開いた事業戦略会見で説明した。その内容が興味深かったので、今回はこの話を基にジェネレーティブAIの企業での利用について考察したい。
ChatGPTの機能をBoxに統合した「Box AI」を投入
Boxの発表によると、Box AIは「OpenAIが開発したChatGPTのAPIをコンテンツクラウドであるBoxに統合したAI機能」で、「インサイトの発見と共有、重要な問題に対する迅速な回答、Boxに格納されている組織のデータに基づくコンテンツ作成をこれまで以上に容易にするとともに、ChatGPTのAIモデルをBoxに統合したのでBox上にあるコンテンツを理解し、新たなコンテンツを作成することも可能になる」という(図1)。
Box Japanの会見にオンラインで登壇したBoxのアーロン・レヴィ氏(共同創業者兼CEO)は、「これまで当社が世の中に送り出してきた技術の中でも最も重要で大変革をもたらすものだ。この最新AIのケイパビリティをBoxの機能として最も安全な形でお客さまに提供したい」と力を込めて語った。
そのケイパビリティについて、レヴィ氏は図2を示しながら、「全ての従業員を1000倍のスピードで働くさまざまな分野の専門家やアシスタントがサポートしている未来を想像してほしい。これがまさしくAIの力だ」と力説した。「これによって文書や画像、プレゼンテーション資料などを作成するなどの個人の生産性向上はさることながら、スピーディーな製品化やカスタマーサポート、パーソナライズドマーケティング、ビジネスのリスク軽減といった会社や組織としての生産性も上がる」と述べた。
その上で、レヴィ氏はBox AIを投入した理由について次のように述べた。
「AIは企業のコンテンツに活用してこそ、最も高い価値を発揮すると考えているからだ。AIモデルと企業の中に蓄積されているさまざまなコンテンツを安全かつ確実につなぐことによってブレークスルーが起きると、私は信じている」(図3)
また、「企業内に存在するデータは、80%が文書や画像などの非構造化データだ。ERP(統合基幹業務システム)やCRM(顧客情報管理)などの構造化データは20%でしかない。これまでは企業のデータを分析するといっても対象は構造化データだけだったが、AIを活用すれば非構造化データも対象になり得る。これは、データドリブン経営を目指す企業にとって大きなパワーになる」と述べた(図4)。
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