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IBMのCEO調査に見る「経営トップがDXで重視するもの」Weekly Memo(2/2 ページ)

経営トップはDXについてどう考え、何を重視しているのか。ビジネス、マネジメント、テクノロジーの3点について、IBMのCEO調査から考察したい。

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日本企業のCEOが最も注目する技術は「生成AI」

 2つ目の質問は、「次の3年間において、会社を率いる上で、経営層の中でCEO以外では誰が最も重要な戦略的意思決定を行うべきだと思うか」だ。グローバルでの2023年と2022年を比較した結果(図3)をみると、CIO(最高情報責任者)、CDO(最高データ責任者)、CISO(最高情報セキュリティ責任者)といったデジタル関連の責任者がいずれもランクを上げているとともに、割合も大きく増加しているのが目につく。


図3 今後3年間に戦略的意思決定で重要な役割を果たすと期待されるグローバル企業の経営層(出典:IBM「CEOスタディ 2023」日本語版) 

 とりわけ、CIOがCOO(最高執行責任者)、CFO(最高財務責任者)の次にランクされたことは、CEOが意思決定においてDXを重視していることの表れといえるだろう。CEOが全体最適のDXを目指しているなら、現場での取り組みもさることながらインフラの刷新にも乗り出すはずだ。その際、全社のDXにおけるCEOの右腕となり得るのはCIOである。

 この質問に対し、日本の調査結果だけを取り出してグローバルと比較すると(図4)、グローバルと同様、日本もCIOが3位となっており、CDOやCISOはグローバルよりもランクアップしている。


図4 今後3年間に戦略的意思決定で重要な役割を果たすと期待される日本企業の経営層(出典:IBM「CEOスタディ 2023」日本語版)

 この変動は、日本のCEOがDXを一層重視していると取れる一方で、「DXに関する意思決定をそれぞれの責任者に委ねたい」という意識の表れとみることもできるだろう。ただし全体観としては、世界と日本の傾向は大きく変わらないといえる。

 3つ目の質問は、「次の3年間で、必要な結果を出すために最も役立つと思われるテクノロジーは次のうちどれか」だ。グローバルでの2023年と2022年を比較すると、上位5位まで昨年と変わらないことが分かる(図5)。


図5 今後3年間にグローバル企業のCEOが結果を出すために役立つと期待するテクノロジー(出典:IBM「CEOスタディ 2023」日本語版)

 IBMはこの結果について「コアなテクノロジーに対するCEOの期待は引き続き堅調」とし、「CEOの期待が高まりつつあるのはアナリティクスとデータアーキテクチャ」との見方を示した。さらに「上位5位は昨年と変わらなかったが、回答の割合を見ると今年は6位以下も昨年より高い数値を示している。つまり、CEOが期待するテクノロジーが増えたことを表している」と述べた。

 CEOがテクノロジーに興味を持つのは良いことだ。テクノロジーの詳しい中身は分からなくても、そのテクノロジーで何ができるようになるのか、何にどんな影響があるのかを理解することが大事だ。これまで筆者が取材してきた敏腕な経営者は必ずテクノロジーの意義を押さえていたと実感している。

 この質問に対し、日本の調査結果を取り出してグローバルと比較したのが図6だ。


図6 今後3年間に日本企業のCEOが結果を出すために役立つと期待するテクノロジー(出典:IBM「CEOスタディ 2023」日本語版)

 IBMも「日本のCEOは世界のCEOに比べて、高度なAI(人工知能)に対する期待が大きい」と述べるように、とりわけ日本のCEOは「生成AI」に敏感なようだ。まさしく、このテクノロジーで何ができるようになるのか、何にどんな影響があるのかを想像できるからだろう。

 以上、3つの質問への回答結果を説明してきた。この3つを取り上げたのには理由がある。それは、1つ目がビジネス、2つ目がマネジメント、3つ目はテクノロジーの観点から、経営トップがDXについて何を重視しているかを洞察できると考えたからだ。その意味で、今回のIBMの調査結果は興味深い内容だった。

著者紹介:ジャーナリスト 松岡 功

フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身

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