Microsoft、生成AIによる知的財産権侵害での法的リスクを負担する新方針を発表
Microsoftは生成AIの出力に関する知的財産権侵害での法的リスクを負うとする「Copilot Copyright Commitment」を発表した。
Microsoftは2023年9月7日(現地時間)、生成AI(人工知能)の出力を利用したことで知的財産権侵害のリスクにさらされた際、同社が法的リスクに対して責任を負うと明言した「Copilot Copyright Commitment」を発表した。
安全なAI利用を促進 Copilot Copyright Commitmentの中身は?
Microsoftは既に知的財産権に関する補償サポートを提供している。今回のCopilot Copyright Commitmenはこれを「法人向けCopilotサービス」および「Bing Chat Enterpriseの有料版」においてAI支援Copilotの使用とCopilotが生成する出力に対する著作権侵害のクレームにまで拡大したものだ。
ユーザーが「Microsoft 365 Copilot」などで生成される出力結果を利用したことで著作権侵害で訴えられた場合、「製品に組み込まれたガードレールおよびコンテンツフィルターを使用している」という条件で、Microsoftがユーザーを弁護するとともに、訴訟の結果生じた不利な判決や和解によって発生した賠償金を支払うという。
Microsoftはユーザー保護を明確にする理由として以下の3つを挙げている。
- Microsoft 365 Copilotの有償サービスを使って法的な問題が発生した場合、それはユーザーの問題ではなくMicrosoftの問題であると考える。Microsoftは約20年間同様の取り組みを続けており、Microsoft 365 Copilotについても例外ではない
- Microsoftは知識の普及を促進し、社会の重要課題を解決するために世界がAIを必要としていると信じている。だが同時に、クリエイターが著作権を保護して創作物から適切な収益を得ることも重要だと考えている。MicrosoftはAIを巡るさまざまな問題に対して真摯(しんし)に継続して取り組んでいく
- Microsoftはクリエイターの著作権を尊重するためにMicrosoft 365 Copilotにクラシフィケーションやメタプロンプト、コンテンツフィルタリング、運用監視、第三者のコンテンツの著作権侵害などの不正使用の検出といった各種ガードレール機能を搭載している
保護の対象には「Microsoft Word」「Microsoft Excel」「Microsoft PowerPoint」などに加えて、開発者向けに提供されている「GitHub Copilot」も含まれている。Copilotサービスの出力に関してはMicrosoftが知的財産権を主張しないという従来の立場はそのまま継続されると説明されている。
Microsoftは大規模言語モデル(LLM)技術に基づく生成AIを積極的に製品やサービスに統合する取り組みを進めている。「Copilot Copyright Commitment」はこうしたサービスをユーザーが不安に感じることなく利用できるようにする狙いがある。
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