富士通とNECの最新受注状況から探る「国内IT需要の行方」:Weekly Memo(1/2 ページ)
今後の国内IT需要の行方はどうなるか。需要の伸びが予測される分野とは。富士通とNECの最新受注状況から探ってみたい。
基幹システムのモダナイゼーションやDX(デジタルトランスフォーメーション)、さらには生成AI(人工知能)ブームなどで活気づく国内のIT市場。ただし、不測の事態が起こりかねない国際情勢や不安定な経済の動きが国内景気に影響を及ぼす可能性もある。今後の国内IT需要の行方はどうなるか。ITサービス事業者の代表格である富士通とNECが相次いで発表した2023年度(2024年3月期)上期(2023年4〜9月)の決算から需要動向の先行指標となる受注状況に注目して見通しを探る。
「SXが新たなIT需要になりつつある」(富士通)
富士通が2023年10月26日に発表したITサービスにおける上期の国内受注状況は、全体で前年同期比118%と大きく伸長した。
業種別では、「パブリック&ヘルスケア」(官公庁・自治体・医療)が前年同期比127%、「ファイナンスビジネス」(金融・保険)が同123%と大きく伸び、「エンタープライズビジネス」(製造業などの産業・流通・小売)、「ミッションクリティカル 他」も二桁成長となった。
こうした状況について、同社の磯部武司氏(取締役執行役員SEVP CFO)はオンライン会見で次のように説明した。
「国内の受注は第1四半期から続く堅調なデマンド(需要)によって、下期以降の増収につながる受注残高も高い水準で積み上がっている。上期に全体の受注が大きく伸びたのは、モダナイゼーションやDXの商談を中心に拡大したからだ。業種別では、パブリックで官公庁のシステム更改案件を複数獲得し、ヘルスケアも電子カルテや医療情報システムへの投資が回復基調にある。ファイナンスビジネスでは、メガバンクや大手保険会社の基幹システムの更新やモダナイゼーション案件を獲得した。エンタープライズビジネスは、製造業やモビリティ分野を中心にモダナイゼーション案件を獲得し、特に第2四半期(2023年7〜9月)が第1四半期(同4〜6月)を上回る勢いで伸長した。ミッションクリティカル他は、ナショナルセキュリティ分野のSI(システムインテグレーション)案件獲得が伸長に貢献した」
受注状況については、業種別に見ても全分野が二桁成長という好調ぶりに、筆者は会見の質疑応答で「これまでにも増して全分野でモダナイゼーションやDXの需要が高まっているということか。その他にも企業などで新たなIT投資の動きがあるのか」と聞いてみた。
これに対し、磯部氏は「需要の高まりについてはそう実感している。さらに当社の受注の伸びは、調査会社などの国内IT投資の予測を上回っているとみている。その理由として、ここにきて確かな需要を感じているのは、社会課題の解決に向けたSX(サステナビリティトランスフォーメーション)だ。多くのお客さまにおいてSXへの取り組みが本格的に始まったと感じている。従って、そのためのソリューションが求められるようになってきた。当社が今、注力している新たなサービス事業モデルの『Fujitsu Uvance』はそのためのものだ」と、自社ソリューションのアピールも交えながら、SXが新たなIT需要になりつつあることを強調した。
下期(2023年10月〜2024年3月)の受注の動きについてはどうか。磯部氏は、「全体の動きでは、下期もこれまでと同様、好調に推移するとみている。業種別で今一番勢いを感じているのは、エンタープライズビジネスだ。2023年度に入って上昇軌道に乗ってきており、さまざまな商談ベースでも手応えを感じている」との見方を示した。
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