日本のDXは停滞しているのか?――ITRの2023年調査から「現在地」を探る:Weekly Memo(2/2 ページ)
日本企業のDXは本当に進んでいるのか。ITRによる最新の調査結果では「停滞の動き」も見られる。同調査結果から日本企業のDXの現在地を探る。
DXで成果を上げている企業は全体の4分の1
図4は、DXにおけるテーマごとの取り組み状況を表したグラフである。
「従業員エンパワメント」「顧客エンゲージメント」「オペレーション最適化」「製品・サービスの競争力向上」という4つの大項目にそれぞれ4つの項目がある。項目ごとに「進行中・実施済みで成果も出ている」「進行中・実施済みだが成果は出ていない」の割合が、2022年度から2023年度の変化として示されている。
「従業員エンパワメント」と「オペレーション最適化」は、いわば社内のDXである。成果が出ているかどうかという観点からすると、これら社内DXにはほとんど変化は見られない。一方、同じ観点で最も変化が見られる大項目は「製品・サービスの競争力向上」だ。中でも「製品・サービスの付加価値向上」「他社との共創、エコシステム構築」の項目は2ポイントずつアップしている。
ただ、図4のグラフの全体感としては、目立った変化はないと言えるだろう。
図5は、図4の16項目についての取り組み状況に基づき、回答企業の「DX実践度スコア」を算出したグラフである。
図4において、全体感として目立った変化がなかったので、図5においても同様の結果となっている。特に50点以上の「成果が上がっている段階」が2022年度も2023年度も変わらず25%ということで、ここでも「停滞している」状況といえそうだ。
図6は、図5で示したDX実践度スコアの変化を業種別に見たグラフだ。
業種別において、全体平均を大きく上回っているのは「情報通信」と「金融・保険」で、2つとも2022年から2023年にかけての伸びも大きい。この点についてITRは、「情報通信はユーザーであるとともにDXを支援するベンダーでもあるので、取り組みは他の業種に比べて先行している。金融・保険もDXによる影響が大きいので各社とも積極的に取り組んでいる」との見方を示した。
一方で、「建設・不動産」「卸売・小売」「サービス」が減少していることが明らかになった。つまり、これらの業種でDXの取り組みが後退しているということだ。ここは理由をさらに追及したいところである。
図7は、図5で示したDX実践度スコアの変化を従業員規模別に見たグラフだ。
大まかにいうと、大企業では取り組みが進み、中堅企業でも着実に広がりを見せているが、中小企業ではむしろ後退している状況だ。
これまで見てきて、印象的なのはやはりDXの取り組みが停滞していると見られることだ。
なぜ、停滞しているのか。成果を出せずにいるからではないか。
なぜ、成果を出せないのか。全社的な取り組みに苦労しているからではないか。
なぜ、苦労しているのか。
こう自らに問い詰めていきながら、引き続き取材を続けていきたい。
著者紹介:ジャーナリスト 松岡 功
フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身
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