魅力的な「DX共創施設」とサグラダ・ファミリアの共通点は? ネットワンの取り組みから考察してみた:Weekly Memo(2/2 ページ)
ITベンダーとユーザーの「共創」が重視されるDX。大手ベンダーの多くはその推進施設も用意している。そうした中で、魅力的なDX共創施設とはどうあるべきか。ネットワンシステムズの取り組みから探ってみたい。
2. アイデア創出と熟成
「PROJECT ROOM」を活用することにより、アイデアの創出からビジネスモデルの仮説の構築、検証までを実施できる(図4)。
3. アイデアの実証
テストに必要な環境が整備された「LAB ROOM」を活用することにより、アイデアを実証できる(図5)。
4. 情報発信と認知向上
創出したアイデアを市場へ発信するため、400人規模まで収容可能な「V HALL」を活用したセミナーやイベントを開催できる(図6)。
藤田氏はこうした活用例を通じて、「netone valleyがさまざまなアイデアを形にしていく実験場になってきていると実感している」と語った。
筆者がnetone valleyを見て回った印象は、広い空間にさまざまな共創の場所が設けられており、日常とは異なる感覚でアイデア創出に集中できそうだといったところだ。もともと倉庫として使われていた広い空間を人間の発想に生かそうという試みがうかがえた。
DX共創施設は「サグラダ・ファミリア」を目指せ
開設からおよそ7カ月、これまでの来場者から「もっとこうしてほしい」という声はあるのか。会見の質疑応答でこう聞いてみたところ、篠浦氏は次のように答えた。
「これまで5000人を超える来場者が来訪し、さまざまな形で利用している。来場者には同業他社も含まれるが、これからのDX時代はこれまで競合していても協業パートナーになる可能性があるので、オープンな姿勢でお迎えしている。ご要望としては、ベンチャーやスタートアップ企業から『netone valleyを自分たちの活動拠点として柔軟に利用できるようにしてほしい』とか、同業他社から『共通テーマを掲げてイベントやセミナーを開催したい』といった声がある」
筆者がこの質問をしたのは、冒頭で紹介した篠浦氏の発言があったからだ。「完成形を定義せず、進化し続ける」のであれば、常に顧客や協業パートナーの声に耳を傾けることが不可欠だ。
同社はnetone valleyのコンセプトを「新しい価値を創造し豊かな未来を切り拓くチャレンジの場」としている。「DXにおけるエコシステムのハブの役目」(篠浦氏)や「さまざまなアイデアを形にしていく実験場」(藤田氏)との発言もあった。
DX共創施設のあり方としては、どれもふさわしい表現と言えるだろう。ただ、もう一歩踏み込んで「あるべき姿」を考えたとき、最もふさわしいのは篠浦氏の冒頭の発言にある「これで完成というのではなく、共創によってイノベーションを起こし続けられるように進化させていく」という姿勢ではないだろうか。
篠浦氏の発言を聞いたとき、筆者の頭には人々を魅了し続ける「サグラダ・ファミリア」の姿が浮かんだ。スペインのバルセロナにそびえ立つ未完の大聖堂は、実は巨大な楽器をつくろうとしていたのではないかとの説もある。DX共創施設においても、これから最も求められるのは「人々を魅了し続けること」ではないか。今回の会見で、そう強く感じた。
(注1)イノベーションセンター
著者紹介:ジャーナリスト 松岡 功
フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身
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