「モダナイゼーションはITだけの話ではない」――PwCの2023年調査で判明したDX“4つの課題”:Weekly Memo(2/2 ページ)
DXを進める企業にとってITモダナイゼーションは必須の取り組みだが、課題も多い。どんな課題を乗り越えなければならないのか。PwCコンサルティングが実施した最新の2023年調査から探る。
最新調査から浮かび上がった4つの課題
だが、ITモダナイゼーション成熟度において準先進の割合は高まったものの、先進の割合は2022年の調査(7%)から横ばいとなった。この点に着目すると、ITモダナイゼーションは全体として着実に進みつつもまだまだ課題があるようだ。PwCでは今回の調査から、次の4つの課題を挙げた。
1. 経営層をはじめとしたリーダー陣の新しい技術や進め方に対する理解不足
図3は左にアジャイル開発推進における課題、右にクラウドネイティブ化における課題を挙げている。左の4番目、右の2番目に「経営層、リーダー層の理解がない」が挙がっている。
鈴木氏はこの調査結果について、「アジャイル開発やクラウドネイティブ技術の活用は、これまで現場がボトムアップで取り組んできた。ただ、ボトムアップの改革ではいずれ取り組める範囲に限界がくる。全社レベルで改革を実現するのであれば、経営トップの強いリーダーシップが不可欠だ。さらに、こうした取り組みがビジネスにどう生かせるかをしっかりと理解して社内に啓発するリーダーを適材適所に配置していくことが望ましい」との見方を示した。
2. デジタル人材の不足
図4のグラフの内容は図3と同じだが、いずれも最上位に人材不足が挙がっている。鈴木氏はこの調査結果について、「アジャイル開発やクラウドネイティブ技術のエンジニア不足は深刻な状態だ。外部からなかなか採用できない状況なので、内部で育成して内製化を進めることを考えていかなければならない。とはいえ、自社で内製化するのが効率的ではない領域については外部活用を視野に入れた方がよい。今後は人員計画を最適化し、戦略領域における内製化の範囲をより拡大していく必要がある」と述べた。
3. パブリッククラウドをうまく使えていない
パブリッククラウドを活用する上で抱えている課題を聞いた結果(図5)について、鈴木氏は「パブリッククラウドの普及に伴い、既存システムとの連携や、IaaSとしてしか使用できていないことによるコスト増加など、新たな課題が浮かび上がってきた」と説明した。
4. IT部門において生成AIをうまく使えていない
システムの開発や運用において生成AI(人工知能)を適用した領域を聞いた調査結果(図6)について、鈴木氏は「IT部門における生成AIの活用領域では、既存業務の効率化が多く、プログラム生成などの領域への関心はまだ少ない」と指摘した上で、「生成AIの持つ可能性を踏まえると、プログラムコードのレビューや既存システムの仕様の解析など、人間が膨大な時間と考察を積み重ねて対応してきた領域でこそ、生産性や正確性の飛躍的な向上につながる可能性が高い」と説明した。
さらに、「基幹システムの課題の一つであるブラックボックス化の課題解消でも、生成AIが役立つ可能性がある」とも述べ、「生成AIをどう活用していくかが、ITモダナイゼーションのカギになるのではないか」との見方を示した。4つ目の課題については、「生成AIがこの1年、大きな話題になった」(鈴木氏)ことを受けて取り上げたとしている。
以上が、PwCの調査結果から浮かび上がったITモダナイゼーションの課題だ。冒頭でも述べたように、ITモダナイゼーションは企業にとってDXを進める上で欠かせない取り組みだ。直接的にはDXの「D」の話だが、PwCが指摘するように組織や人材、プロセスを対象にした「X」への取り組みでもある。とりわけ、経営層とIT部門がそうした意識を強く持って課題解決に挑む姿勢が求められるのではないだろうか。
著者紹介:ジャーナリスト 松岡 功
フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身
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