2024年、生成AIはどう広がり、ビジネスにどう影響をもたらすか――JEITAの調査から探る:Weekly Memo(1/2 ページ)
2024年、大注目を集める生成AIがどのように広がり、世の中にどんな影響を及ぼしていくか。電子情報技術産業協会の最新調査レポートを基に考察する。
2024年のITやDX(デジタルトランスフォーメーション)における動きで筆者が最も注目するのは、2023年に大注目を集めた生成AI(人工知能)がどう広がり、世の中にどのような影響を及ぼしていくかだ。その点について、電子情報技術産業協会(以下、JEITA)がまとめた市場動向の最新調査レポートに興味深い内容が記されているので、2024年最初の本連載ではそれを基に生成AIの行方について考察したい。
しっかり頭に入れたい生成AIの「ロードマップ」と「リスク」
JEITAは2023年12月21日、毎年末恒例の会長会見で、注目分野として生成AIを取り上げ、その市場動向の調査レポートを公表した。本調査は、主要国政府の政策や海外先進企業の動向など公知情報の分析と国内先進企業へのヒアリングを基に推計したものだ。その概要を説明した会長の小島啓二氏(日立製作所 社長兼CEO)は、「生成AIのような急速に進歩するデジタル技術をどのように使いこなすか、どのように社会実装するかが、社会課題の解決や経済成長に直結する」と切り出した。
図1は、生成AIを構成するビジネスレイヤー(生成AI基盤モデルや生成AI関連アプリケーション、生成AI関連ソリューションサービス)に焦点を当て、2030年までの世界と日本の需要額の見通しをまとめたものだ。
この図によると、世界の生成AI市場の需要は、2023年の106億ドルから2030年には2110億ドルと約20倍に急成長する見通しだ。日本市場も現在の15倍の約1.8兆円に成長する見通しだ(平均為替レートは2023年実績の1ドル138.6円とした。これ以降の円換算も同様)。
生成AI市場拡大のロードマップを見ると(図2)、生成AIは2023年を立ち上げ時期として、2030年までにアプリケーションの急速な普及や専門分野向けの特化型生成AI活用ニーズの拡大によって徐々に適用・応用範囲を広げて市場が拡大する見込みだ。
JEITAは「AIは社会課題の解決や、人々がより豊かに創造性をより発揮するために積極的に利活用されるべきものだ。利用者も含め全ての関係者がAIの適切な利活用のために、それぞれの役割や責任を果たし、協力することが重要となる」とする。想定されるリスクを踏まえ、AIのより積極的な活用や普及促進に向けての取り組んでいく(図3)。
生成AIに対する各国の政策・法制度を示したのが図4だ。「国際機関や多国間協定、条約などによる国際的協力を通じて、AIの社会実装が推進されるべきだと考える。生成AIが完璧なものではないことを広く認識してもらうとともに、全ての利用者がAIの特徴やもたらされる効用とリスク、倫理的原則を正しく理解し、AIの適切な利活用法を判断し、使いこなせるようにすることの重要性がより一層、高まっている」というのがJEITAの見方だ。
生成AIの行方を探る上では、特にロードマップ(図2)とリスク(図3)をしっかりと頭に入れておきたいところだ。
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