電力大量消費時代、いかにカーボンニュートラルを実現するか? 日立が支援サービスを提供開始
生成AIの利用拡大などによって電力需要の増大が見込まれる中で、脱炭素目標の達成は企業にとって悩みの種となりつつある。大量の電力を消費するデータセンターを利用している企業に向けたカーボンニュートラルを支援するサービスとは。
2024年1月19日、日立製作所(以下、日立)は顧客のシステムを預かるデータセンターのハウジングサービスとして、カーボンニュートラル(注)化した電力を割り当てる「再エネ電力提供オプションサービス」の提供を開始した。同サービスを通じて、ITシステムに関わる電力のカーボンニュートラル化とその証明を容易にするとしている。
(注)二酸化炭素(CO2)をはじめとする温室効果ガス(GHG)の排出量と吸収量を均衡(差し引きゼロ)にすること。GHGを削減する取り組みへの投資や寄付、再生可能エネルギー(再エネ)の利用、非化石証書の購入などによって実現するとされる。
「再エネ化」した電力でカーボンニュートラルを実現
日本政府はカーボンニュートラル実現の目標年を2050年としており、持続可能な経営の一環として環境への配慮を盛り込む「環境経営」に取り組む企業が増えつつある。一方で、生成AI(人工知能)の利用拡大などに伴い、電力消費量の増大も見込まれている。
今後、電気を大量に消費するデータセンターを利用する企業はいかにカーボンニュートラルを実現するのかが、経営課題の一つとなるだろう。
日立のデータセンターでは、同社が提供するクラウドサービスで2022年8月から再エネ由来の電力を割り当ててきた。今回開始するサービスでは、データセンターにおける取り組みをハウジングサービスにも適用して顧客の環境経営を支援するとしている。
同サービスの概要は以下の通りだ。
1. 「再エネ化」した電力を割り当て、ハウジングサービス利用におけるカーボンニュートラルを支援
日立のデータセンターのハウジングサービスで利用するIT機器や空調などの設備の消費電力に、日立が調達した再エネを割り当てる。
具体的には、日立が日本卸電力取引所(JEPX)の再エネ価値取引市場で、再エネ発電所が発電した電力が持つ環境価値を「非化石証書」としてあらかじめ取得する。非化石証書とは、再エネで発電された電気の「非化石価値」を証書として売買するものだ。その環境価値を、日立のデータセンターが提供するハウジングサービス利用時の消費電力に割り当てることによって、IT機器や空調設備などの稼働により消費される電力が「再エネ化」される。
2. 再エネ利用の第三者証明書の発行によって顧客の環境経営に貢献
利用する電力が再エネ由来であることを第三者が立証した証明書を発行する。同証明書は顧客のITシステムに再エネを利用している根拠としてサステナビリティ報告などに活用可能だ。顧客の環境への取り組みの「見える化」を支援する
なお、2のサービスは2024年4月1日の提供開始を予定している。
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