マイクロソフトが狙うのは「CopilotのWindows化」? プライベートイベントの取材から考察:Weekly Memo(1/2 ページ)
マイクロソフトが生成AIに関する最新の取り組みをプライベートイベントで明らかにした。その内容と根本にある考え方を紹介しつつ、エンタープライズアプリ市場における競争のポイントを探る。
「これまで1年余り話題で持ち切りだった生成AIは、これからいよいよ本格的に活用されるようになっていく」
日本マイクロソフト(以下、マイクロソフト)代表取締役社長の津坂美樹氏は、同社が2024年2月20日に東京ビッグサイトで開催したプライベートイベント「Microsoft AI Tour Tokyo」のオープニングキーノートでこう切り出した。2023年、OpenAIの対話型チャットbot「ChatGPT」を担いで生成AI(人工知能)市場にいち早く参入した同社が、その勢いをさらに拡大しようとグローバルで実施しているプロモーションの一環だ。同イベントの取材を通じて、Microsoftの生成AIにおける最新の取り組みとともに、その根本にある考え方、そして筆者なりに市場競争のポイントを探ってみたい。
全てのクラウドサービスにCopilotを組み込み
「生成AI活用の経済効果は2025年度までに中小企業だけで11兆円、日本全体では34兆円に上る。これは日本のGDP(国内総生産)の約6%に相当する」
津坂氏は冒頭の発言に続いて、経済産業省の試算を基に生成AIのインパクトについて述べ、「その背景には少子高齢化や労働人口の生産性といった日本が抱える問題の解決につながるのではないかとの見方がある。さらに、クラウド化の促進や意思決定の迅速化、新たな働き方やビジネスの創出につながるユースケースがどんどん出てくると期待されている」と説明した。
その上で、同氏は「MicrosoftはかつてPCの普及に努めてきたが、これからは(Microsoftが提供する生成AIである)『Copilot』をお客さま一人一人にお届けしたい。そのために、当社は全てのクラウドサービスにCopilotを組み込んでいる」と、Microsoftの取り組みを紹介した。2023年後半にMicrosoftが早期ユーザーを対象として実施した調査では、「70%が生産性向上」「67%が時間を節約」といった結果が出たとしている(図1)。
津坂氏はCopilotについて「Copilotは“副操縦士”。“操縦士”である皆さんそれぞれがやりたいことをサポートする役目だ。MicrosoftはCopilotを“AIの民主化”を体現するプラットフォームとして普及させていきたい」と説明した。
津坂氏に続いて登壇したのは、米Microsoftのエグゼクティブバイスプレジデント(EVP)でサティア・ナデラCEO(最高経営責任者)直属のチーフマーケティングオフィサー(CMO)を務める沼本 健氏だ。
「AIによるビジネスの変革が、これから本格的に始まる」と切り出した沼本氏は、AIトランスフォーメーションが企業に大きな影響をもたらす領域として、「従業員体験の充実」「顧客エンゲージメントの改革」「ビジネスプロセスの再構築」「イノベーションのカーブを曲げる」(イノベーションを起こしやすくする)の4つを挙げた。
これらに対し、Microsoftは何をするのか。同氏は次の3つを挙げた。
- Copilotでビジネス全体の生産性を向上
- オープンなAIプラットフォームとパートナーエコシステムで各社特有のAI機能を構築
- 信頼に基づく共同イノベーションでビジネスの保護
以下、それぞれに同氏の説明のエッセンスを記しておく。
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