「あのApple製品」は意外とビジネスに使える? SAPらがグイグイ導入:CIO Dive
巨大テック企業の中で例外的に、生成AIへの取り組みに慎重さを見せるApple。その一方で、ビジネス向けの展開に意欲を示し、既に大企業が導入を進めている製品もある。
Appleのティム・クックCEO(最高経営責任者)は「社内で生成AI(人工知能)開発に取り組んでいるが、顧客向けの技術についてはより丁寧かつ慎重に進めている」と、2024年2月1日(現地時間、以下同)に開催された第1四半期決算説明会で述べた。
SAPやNIKEも 大企業が導入を進める「あのApple製品」
クック氏は「われわれは基本方針として実際に成果を出してからその成果について語ることを大切にしている。成し遂げた後で初めて公にすることにしている。今回の生成AIに関してもその方針に従うつもりだ」と話した(原注:クック氏の発言は「Seeking Alpha」による文字起こし)(注1)。
続けて、同氏は顧客向けの生成AIの取り組みについて「2024年後半に詳細を発表する予定だ」と述べた。
生成AIに対するAppleのアプローチは、この技術の機能を製品や新サービスに組み込もうと競争する他の多くのテックベンダーとは対照的だ。「当社にとって生成AIとAIは大きなチャンスがあるが、踏み込み過ぎず、先走らないようにしている」とクック氏は述べ、具体的な情報は明かさない姿勢をとった。
一方で、Appleはビジネス向けの展開に意欲を示している。
同様に、Appleは企業向けメーカーとしての地位もゆっくりと着実に確立している。調査会社のIDCが実施した調査によると、PC分野では市場が安定するにつれて、Appleは最大の競争相手であるDell TechnoligiesやHewlett Packard(HP)、Lenovoに迫る体制を整えている(注2)。
Appleはスマートフォン市場において規模、知名度ともに優位に立っている。「iPhone」に生成AIが導入されれば、生成AI活用の躊躇(ちゅうちょ)が軽減されるかもしれない。2024年2月2日に発表されたCounterpoint Researchの調査によると、Appleは2023年の世界のスマートフォン出荷台数で初めてSamsungを上回った(注3)。
Appleはまた、ゴーグル型のヘッドセットデバイス「Apple Vision Pro」で企業向け製品分野にも進出している。WalmartやNike、資産運用会社のThe Vanguard Group、大手総合情報サービス会社のBloomberg L.P.、ソフトウェア会社のSAPなどが同デバイスを既に導入している。
「SAPは本当にApple Vision Proに賛同してくれている。SAPのシステムは多くの企業に導入されているため、企業向け製品には大きなチャンスがあると思う。今の状況にこの上なく興奮している」(クック氏)
(注1)Apple Inc. (AAPL) Q1 2024 Earnings Call Transcript(Seeking Alpha)
(注2)What Cisco learned about Mac vs. PC in the enterprise(CIO Dive)
(注3)iPhone Hits Record 50% Revenue Share on US, India and Emerging Markets; China Risks Remain(Counterpoint)
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