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日立は「生成AIを活用するための組織づくり」をどう進めているか 徳永副社長に聞くWeekly Memo(1/2 ページ)

企業は生成AIとどう向き合い、どう活用していくべきか。そのヒントを探るべく、生成AIの活用を積極的に進めている日立製作所の德永副社長に話を聞いた。

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 企業にとって、生成AI(人工知能)とどう向き合い、どう活用していくかが、競争力そのものに大きな影響をもたらすようになってきた。どうすればいいのか。そのヒントを探るべく、生成AIの活用を積極的に進めている日立製作所(以下、日立)の德永俊昭氏(執行役副社長 デジタルシステム&サービス統括本部長)に話を聞いた。同社はビジネスとマネジメントの両面で生成AIの活用をどのように進めているのか。

日立の社内外利用に見る「生成AIの生かし方」


日立製作所の德永俊昭氏(執行役副社長 デジタルシステム&サービス統括本部長)

 まず、生成AIのインパクトについて、どのように見ているのか。

 「生成AIはIT業界だけでなく、全産業、さらには世界のあらゆる活動に大きな影響をもたらすテクノロジーだと捉えている。そのインパクトはかつての産業革命を超え、人類史上これまでにないイノベーションをもたらすのではないか。企業にとっては、このテクノロジーをいかに活用していけるかどうかが、今後の盛衰を決めるといっても過言ではないだろう」(德永氏。以下、会話文は全て德永氏の発言)

 「人類史上」という言葉に象徴されるように、これまでにないインパクトの大きさを想定しているのが印象的だった。これが日立の受け止め方である。経営首脳がインパクトをどう捉えているかは、企業活動の最大の動力源となるだけに、まずはその点を確かめた次第だ。

 次に、生成AIの社内利用において、日立は生成AIをどのように使っているのか。その効果のほどはどうか。

 「社内では、私が管掌しているデジタルシステム&サービス統括本部(以下、DSSセクター)で2023年9月からOpenAIの『ChatGPT』を使用して効果を得られたので、2024年4月から日立グループ全従業員26万人が使えるようにする。オフィスワークで特に効果的なのは翻訳だ。ドキュメント作成などにおいて相当の生産性向上を実感している。業務領域で見ると、ソフトウェア開発とカスタマーサービスで特に積極的な活用を進めている。いずれも当社がこれまで蓄積したナレッジをしっかりと学習させることによって、ソフトウェア開発では現時点で30%以上の時間効率アップ、カスタマーサービスではお客さまからの問い合わせにほぼ正しく回答できるところまで来ている」

 日立はグローバル企業なので、とりわけ翻訳の効果が大きいようだ。また、ソフトウェア開発とカスタマーサービスについては多くの企業でも取り組んでいる業務なので、まずはこれらの領域から試行してみてもいいだろう。ソフトウェア開発については、DX(デジタルトランスフォーメーション)の動きの中で内製化に取り組む企業も増えてきていることから、生成AIが内製化ニーズに応える可能性は大いにありそうだ。

 では、ビジネス(社外利用)においてはどうか。

 「社内利用でも述べたソフトウェア開発をはじめとしたSI(システムインテグレーション)事業への適用を強力に進めている。とりわけ、海外ではエンジニアリング子会社のGlobalLogic(グローバルロジック)がリード役となり、生成AI関連の案件として現時点で国内外を合わせて100件を超える受注を獲得した。さらに、生成AIは日立ならではのビジネスである『Lumada』をさらに進化させるものだと捉えている」

 Lumadaとは、日立グループの幅広い事業領域で蓄積してきた制御・運用技術(OT:オペレーショナルテクノロジー)と、AIやビッグデータ収集・分析などの情報技術(IT)、および製品・設備(プロダクト)を組み合わせ、顧客にとって最適なソリューションを提供するDX支援ビジネスモデルのことだ。

 その「顧客協創フレームワーク」は、顧客課題の理解(PLAN:右上象限)から始まり、「IT×OT×プロダクト」によるソリューションの創出・実装(BUILD:右下象限)、運用(OPERATE:左下象限)、保守(MAINTAIN:左上象限)という成長サイクルを、データとテクノロジーを活用して、継続的に回しながら顧客への提供価値を高める循環型ビジネスの実現手法を表している(図1)。


図1 Lumadaの顧客協創フレームワーク(出典:日立の提供資料)

 この顧客協創フレームワークに対し、「生成AIは各象限における生産性向上やイノベーションの創出など、Lumadaサイクルのスピードを加速する強力なドライバーになる」と、德永氏はLumadaと生成AIの関係を説明した。

 Lumadaはあくまで日立のビジネスだが、図1のフレームワークは「顧客協創」なので、顧客企業でも同じ考え方で取り組むことが必要となる。顧客企業サイドからそのスタートを表現すると、「自社の経営課題の抽出」だ。これをきちんとできるかどうかが、生成AIを含めたDXの成功の大前提となる。

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