「SCMのパナソニック コネクト」になれるか? 新たな買収で攻勢をかける同社の野望:Weekly Memo(1/2 ページ)
パナソニック コネクトがサプライチェーン分野の事業拡大に向けて企業を買収し、さらなる攻勢に打って出た。この動きをどう見るか。筆者なりに考察したい。
「企業の基幹業務を支えるITとして、(ERPやCRMなどの)オフィス系とともにサプライチェーン系が、これから一段と有望な市場になると確信している」
パナソニック コネクトの樋口泰行氏(代表取締役 執行役員 プレジデント・CEO)は、同社が2024年3月29日に開いた企業買収についての記者説明会でこう力を込めた。
パナソニック コネクトがサプライチェーン分野へ本格的に攻勢をかける思いや取り組みについては、2023年2月20日公開の本連載記事「パナソニック コネクトが打って出る『一大勝負』とは? SCMに注力する理由を樋口社長に聞いてみた」で紹介した。それからおよそ1年たった今、さらなる攻勢へ打って出た格好だ。企業の基幹業務ソフトウェアの観点から見ても興味深い動きなので、筆者なりに考察したい。
まずは今回の発表内容について、樋口氏の説明を基に概要を紹介する。
子会社のBlue Yonderを通じてワンネットワークを買収
今回の発表の骨子は、同社がSCM(サプライチェーン管理)ソフトウェアを提供する子会社の米Blue Yonderを通じて、企業間のデジタルサプライチェーンネットワークを提供する米ワンネットワークエンタープライズ(One Network Enterprise)を買収することで合意したというものだ。買収額は約8億3900万ドル(約1270億円)。2024年度第2四半期(7〜9月)をメドに買収を完了する予定だ。
ワンネットワークが提供するデジタルサプライチェーンネットワークとは、「複数の企業が同一のプラットフォーム上で需要や供給、売買、物流、在庫といったデータをリアルタイムで共有、可視化、活用できる仕組み」のことだ。同社のプラットフォームには現時点で15万社を超える企業が接続しており、1日の処理件数は560万件に達する。
Blue Yonderのソリューションの概要について樋口氏は、「お客さまのバリューチェーンの川上から川下までエンドツーエンドでAI(人工知能)を活用したソフトウェアの力によってサプライチェーンが自律的に最適化される。それによってオペレーションが効率化され、お客さまのキャッシュフローが改善する。さらに排出ガスや輸送などに関わるCO2(二酸化炭素)の削減といった環境負荷の低減も実現するようなソリューションを提供している」と紹介した(図1)。
Blue Yonderによるワンネットワークの買収は、「これまでの投資とは異なり、圧倒的なゲームチェンジャーになり得るものだ」。どういうことか。「現在のBlue Yonderのお客さまは、SCMソフトウェアをSaaS(Software as a Service)として活用することで自社のサプライチェーンの最適化を図っている」という(図2)。
しかし、「サプライチェーンは本質的に自社だけで完結しない。取引先やパートナーといった複数の企業がさまざまなプロセスに関わっている。それがサプライチェーンを複雑にし、最適化する難しさの大きな要素となっている」と指摘する(図3)。
「今回のワンネットワークの買収がもたらす価値は、まさにそうした問題を解決できることにある」と樋口氏は話す。その理由は何か。「Blue Yonderが抱える3000社のお客さまにワンネットワークのプラットフォームを提供することで、お客さまの取引先などがネットワークでつながるようになる。そうしてつながった企業の数は指数関数的に増え、可視化の範囲も大きく広がる。ネットワークにつながったお客さまにBlue YonderのSCMソフトウェアを適用していけば、一層大きな付加価値を提供できる。さらに、取得できるデータ量が増加するので、Blue YonderのソリューションのコアであるAIの計算精度が飛躍的に高まることになる」と説明した(図4)。
Blue Yonderがワンネットワークと生み出すシナジーについて、「提供価値や技術的な強み、顧客基盤といった、いずれの観点から見ても大きな効果を生み出すと考えている。Blue Yonderは企業間のネットワークと、AIによるエンドツーエンドの最適化ソリューションの両方をワンストップで提供できるようになる。それによって次の成長ステップに移行し、さらなる企業価値の拡大を図る」との見方を示した(図5)。
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